※ADIEU HACHIMAN-YU part2の展評を江上賢一郎さん(福岡アジア美術館・九州産業大学非常勤講師)に寄せていただきました。
※展覧会終了の1週間前、3月20日に、八万湯プロジェクトメンバーやこれまで企画展に参加したアーティストによるフォーラムを開催しました。緊急事態宣言が延長された時期にあって、ほぼ無観客で行われました。
※後半から展示参加のアーティストの会場写真と、自ら収録いただいたトーク・ヴィデオを掲載しました。
ADIEU HACHIMAN-YU part2
2021年1月29日(金)ー3月28日(日)
金土日 11:00-18:00 月~木はメールまたは電話で連絡いただきオープンします。
(e-mail; info@operation-table.com tel; 090-7384-8169 )
出品作家:
Second Planet、生島国宜、金森重樹、鈴木淳、谷尾勇滋、鶴留一彦、ナカムラタツヤ、福地英臣、松野真知、松本了一、森秀信、安田尚平
(2月中旬~3月から参加:
安部貴住、澤登恭子、中川陽介、中野良寿、松本詩津、村田峰紀、諸岡光男、渡部裕二)
DM
八幡東区にあった旧銭湯、八万湯は1960年に建てられたレトロモダンな建物で、2020年取壊し決定になるまで、北九州・福岡のアーティストらが様々なアートプロジェクトの拠点として活用してきました。昨年、3月-4月にOperation Tableにて開催したADIEU HACHIMAN-YUpart1は八万湯の建物が取壊し宣告を受けた2019年12月までプロジェクト・メンバーとして活動してきた6名のアーティストによるもので、八万湯の建物閉幕を惜しむものでした。今回のpart2では、シェア・スタジオだった旧銭湯の建物をイベントや展示のスペースとして使い始めた1996年以来のプロジェクト・メンバーや入替わりのあった旧・新入メンバーに加え、八万湯プロジェクト企画のゲスト・アーティストが勢揃いした展覧会です。3月中旬から会期末までの2週間に、パフォーマンスや音楽ライブ、トークイベントも計画しています。現場での実現が難しかったらON LINEで行います。緊急事態宣言のもとではありますが、密を避けながら、マスク・消毒・換気・検温対策にしたがいながらのご来場をお待ちしています。
ADIEU HACHIMAN-YU part2に参加している八万湯プロジェクトメンバーと、プロジェクト企画のゲストアーティストを紹介します。
[プロフィルは八万湯メンバーについては八万湯プロジェクト・オフィシャルサイトから引用 ]
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SECOND PLANET
1995年、北九州にて結成された宮川敬一と外田久雄によるアーティスト・ユニット。都市空間を使った多数のアートプロジェクトを企画・運営する。 1997年にGallery SOAPをオープン
、国内外のアーティスト、ミュージシャン等と、さまざまなコラボレ−ション・プロジェクトを展開。アーティスト活動の他、社会学者、哲学者、都市計画者、美術批評家等さまざまなジャンルの人々を巻き込んだ、カンファレンス、展覧会、ワークショップなどをGallery SOAPほかで開催している。[東京都写真美術館 私のいる場所-新進作家展vol.4 ゼロ年代の写真論/2006 から引用]
2011年からギャラリーSOAPを拠点にアジアやヨーロッパの各都市をつなぐホテル・アジア・プロジェクトを始めた。現在も「地上でもっとも幸福な場所 ホテル・アジア・プロジェクト」(2021.2.7-21)を展開中。
グッド・ナイト‒おやすみ 2021 デジタルビデオ 3 分 38 秒 2021 年
テレビがデジタル化される以前には、深夜、一日のテレビ放送が終了したことを示す静止画や動画 が流れていました。サイン・ウェーブと共にカラー・バーが表示されるだけの時もあれば、国歌を BGM に、風にはためく国旗や風景、その国に暮らす人々の生活といったものが流れることもありま した。《グッド・ナイト ‒ おやすみ》は、世界中の TV 局がかつて流していた画像やビデオを集め た作品です。
この映像作品は、2/7からインドネシアのジョグジャのアートスペース Ruang Mes 56と、チェコ共和国のプラハのスペース U trativodu 184で展示されます。Operation Tableを加えた3箇所で同時上映中。
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鈴木淳
アーティスト。1962年北九州市生まれ、北九州市在住。
1987年熊本大学理学部生物学科卒業。第6・7回CASKサマースクール(1997年よりCCA北九州に改編)参加。1995年より現代美術作家としての活動を開始。数秒~数分の短い映像シリーズ「だけなんなん/so what?」は400点を越える。映像、写真、インスタレーション、パフォーマンスなど、表現方法に囚われない多種多様な表現活動で我々が持つ固定観念や思考回路を揺らし、日常との関係性を再構築する行為を模索し続けている。個展、ワークショップ、海外でのグループ展、多数。
八万湯には1997年、プロジェクト結成以前にスタジオシェア・メンバーとして加わり、2009年
八万湯プロジェクトアート展プレイベント ビデオインスタレーションを「ATSUSHI SUZUKI 異端の人々~だけなんなん001-355より~」を発表した。2017年「ずとち」にも参加。
鈴木淳が八万湯取壊しが決定した直後に撮影し、2019年12月31日(火)「今日のこの一週間の写真」(その367)として発表した写真2点、と八万湯の建物が解体されさら地になった場所で土の中から拾ってきたタイルのかけら。
銭湯の入り口にあったプルシャン・ブルーのタイル壁面。この裏、右が女湯、左が男湯の入り口だった。縦長タイルがアミダクジのように並んでユニークに湾曲した壁面だった。
八万湯プロジェクトが使っていた女湯の浴槽写真とそのタイルの欠片。
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森秀信
アーティスト。1966年長崎市生まれ/北九州市在住。
1991年武蔵野美術大学大学院造形研究科修了。現代美術センター CCA北九州リサーチプログラム修了。主に写真、映像を用いたインスタレーション作品を制作。マリーナ・アブラモヴィッチのパフォーマンスに影響を受け、映像評論家のスラヴォイ・ジジェクの「イメージスクリーン」に興味を持ちはじめたことにより、ビデオインスタレーションの制作をはじめた。表象の象徴性がもたらす様々な意味を探る事を作品制作のプロセスにしている。田川市美術館、福岡県立美術館、北九州市立美術館他、北九州、福岡、東京で主に発表。また同時に複数のアートプロジェクトも企画している。
八万湯プロジェクトが結成された2000年にプロジェクトメンバーとなり、数々の企画に参加するほか、2010年「ONE NIGHT SHOW 03 森 秀信展ー天沼矛」を開いた。2017年「ずとち」にも参加。
手前のモニターでは森秀信2010年のONE NIGHT SHOWで発表した映像作品、壁面の写真2点は2013年に八万湯企画で開かれた「第3回日本まちあるきフォーラムIN北九州」のプログラムで実施されたエクスカーションのシーン。
フォーラムの参加者をひきつれ旧銭湯、八万湯を案内する森と鈴木。
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花田伸一
1972年福岡市生、北九州市/佐賀市在住。北九州市立美術館学芸員、インディペンデント・キュレーターを経て2016年から佐賀大学地域デザイン学部教員。アートプロデュースを専門とし
現在も「アーティスト・イン・アイランド@壱岐2020」など、様々な地域におけるアート・プロジェクトのキュレーションに関わっている。
2006年から2016年まで、八万湯プロジェクトのメンバーとして活動。「MEETING TABLE 01:芸術・環境・生活~アート×エコロジー×エコノミー」(2009)、「the land school 02:クリエイティヴPTAサミット:モンスター・ペアレンツからクリエイティヴ・ペアレンツへ」(2010)、「大人の図工時間 the land school 2010-2015」を企画する。
「大人の図工時間the land school 2010-2015」「ミーティング・テーブル 芸術・環境・生活~アート✕エコロジー✕エコノミー」「クリエイティブPTAサミット モンスターペアレンツからクリエイティブ・ペアレンツへ」など、展覧会以外のトークや教育プログラムのイベントを続々企画し八万湯をディスカッションのp場として展開した。2017年には「槻田アンデパンダンー私たちのスクラップ&ビルド」展で企画、シャッター街となった閉鎖予定の商店も混じった八幡東区の筑豊商店街で開催し、多くの八万湯プロジェクトのメンバーが参加した。
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福地英臣
アーティスト。1973年佐賀で生まれる。1996年福岡教育大学総合芸術文化学科課程卒業、2002年現代美術センターCCAリサーチプログラム修了を経て、倉敷現代アートビエンナーレ(倉敷美術館ほか/岡山県)、Bunkamura Art Show 2005人工楽園(Bunkamura Gallery/東京)、2007年Art Basel Volta show (バーゼル/スイス)などの企画に参加。共著としてWarriors of Art: A Guide to Contemporary Japanese Artists(日本)と、Dr Fabriano Fabbri (イタリア在住)の著書(タイトル未定)の制作協力などがある。オタク文化のイコンである美少女キャラクターと、マンガ等のコンテンツメディアが内包する表現論に対する言及を深め、また、それらを体現させるビジュアルを模索する。他にも福岡の作家松本了一との「新大名美術館プロジェクト(仮)」など、国内の美術史の在り方を問うトークなども精力的に企画する。
福地英臣のセル画的アニメーション原画をカラーコピーでつないだ作品。昨年の予告通りpart1出品作がヴァージョンアップされたものです。
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松本了一
1973年 長崎県佐世保市生まれ。 1996年福岡教育大学総合文化科学課程美術コース卒業。 現在 福岡県立太宰府高等学校芸術科勤務 。2009年から2014年まで八万湯プロジェクトに参加。
2009〜2011年に断続的に開かれた"ONE NIGHT SHOW"のシリーズのうち、松本了一"bug"の再現。2010年のbugでは2本の白い柱を八万湯に立てドローイングを展示した。この1本が再現されただけでOperation Tableの空間が八万湯に近づいた。
柱の四周にドローイングが貼られている。バグが発生したコンピュータ画面を描写したものらしい。
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鶴留一彦
写真家、アーティスト。福岡県に生まれる。現在北九州市在住。ミュージシャン、デザイナー、研究員を経て、2001年単身渡米。
アメリカを拠点に写真家として活動に入る。6年に渡りアメリカのミュージックシーンを撮り続ける。アメリカはもちろん、フランス、ドイツの音楽誌、広告写真等にてその活動は知られる。2007年に福岡、北九州に拠点を移し制作活動に入る。また映像ディレクターとしてPVやMVの制作に活動の場を広げる。
2010年八万湯プロジェクトのメンバーとなり、2011年「ONE NIGHT SHOW 06」にて約2年に渡り撮り続けていた、舞踏家・原田伸雄の舞台を撮影した作品「ghost(ゴースト)」を展示した。
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松野真知
アーティスト。1983年福岡県北九州市生まれ、うきは市在住。2010年名古屋芸術大学美術学部絵画学科卒業
主な活動に、2012年「とらんしっと:世界通り抜け」Operation Table(福岡)、2012年「LIGHT OF DAY」千草ホテル中庭アートプロジェクト(福岡)、2013年「Fragment」F/N3 Art Lab 1階(山口)
2013年 YCAM10anniversary「Eco Art Village Project 2013」N3 Art Lab(山口)、2014年「"直観"のジオラマ〜九州沖縄アーティストファイル断章」福岡市美術館(福岡)、2017年「槻田アンデパンダンー私たちのスクラップ&ビルド展2017」(筑豊市場商店街/北九州) 、2020年「ファン・デ・ナゴヤ美術展2020 ここに在るということ」(名古屋市民ギャラリー矢田)がある。
酪農家とアーティストとしての表現活動を併行している松野真知は、作品のテーマも乳牛の生活環境や酪農界が直面する諸問題を社会の構造と結びつけるもの。この作品は、2015年八万湯で開催された「In The Cycles/いくつもの環の中で」展のインスタレーションを記録した画像を拡大プリントしたもの。
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金森重樹
アーティスト。アズールアートスクール主宰
1978年北九州生まれ、2001年京都精華大学美術学部洋画専攻卒業。北九州市在住。
2002年リキテックスビエンナーレ入選、2003、2004、2008年小野画廊(東京銀座)での個展、2011年ギャラリーアートスペース「余白」(北九州)での2人展、2014年八万湯(北九州)での個展、2016年YICA「山口盆地考―現代芸術・環境・教育― 2016」での発表の他、北九州を中心に制作発表をする。
2014年、八万湯プロジェクトのメンバーとなり、9月「金森重樹展」を開催。
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谷尾勇滋
アーティスト、1978年広島県尾道市生まれ、福岡市在住。2003年九州産業大学大学院芸術研究科修士課程美術専攻修了。2000年より福岡を拠点に現代美術家として活動開始。写真というメディアでの新たな表現の可能性について関心を持ちながら、写真を用いる場との関係性や写真が内包する問題など、解釈や発見を通して試行している。都市や地域の土地の歴史や文脈について探求したこれまでの作品の延長上として、近年は風景や景観の問題を 主体にした作品を制作している。近年の主な活動として 2019.ART FAIR ASIA FUKUOKA AFAF AWARDS 2019(福岡アジア美術館交流ギャラリー)、2018.山口盆地考2018(中原中也記念館/山口)、2017.企画個展「lost scapes」(GALLERY SOAP/北九州)2016.かがわ山なみ芸術祭(高松市内各所/香川)、2014.糸島国際芸術祭糸島芸農(糸島市/福岡)他 個展、グループ展、アワードなど発表多数。
八万湯プロジェクトには、2016年から参加。2017年「ずとち」に出品。
八万湯内部の写真をトレーシングペーパーにプリントした谷尾の作品。上下とも谷尾の作品が掛けられた2017年「ずとち」の展覧会情景が元になっている。
左に下がるもう1枚、上部は八万湯のファサードと女湯入口のダブル・イメージ、下部は並んだ脱衣箱とヘア・ドライヤーの写真。右壁には八万湯跡地とそこに新たに建つアパートの建築予定図、どちらも写真をもとにした谷尾のペインティングである。
奥のガラス窓手前には、皆でシェアしてた八万湯の鍵が写真に収められている。
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生島国宜
1980年福岡県生まれ。武蔵野美術大学油絵学科を卒業後、2006年より本格的に活動を開始、個展・グループ展出展多数。2014年にはパリのディオールオフィスより直接オファーを受け、特別展「Esprit Dior」(東京)にてクリスチャン・ディオールの肖像画を手掛ける。2020年「VOCA展」(上野の森美術館)に出品。その他、ライブペインティング、ダンスパフォーマンス、ミュージシャン・ダンサーとのコラボレーション等幅広く活動。2009年作品集「夜冷耳目」を刊行。
gallery Yamaki Fine Artのオフィシャル・サイトから引用]
2017年に参加したグループ展「ずとち」に出品していた作品。八万湯のタイル壁に下げた作品だったので、タイルの意匠はないが、Operation Tableでもタイル壁面に展示してみた。カリグラフィーとドローイングの接近を試みた作品。生島国宜のもう1点は舞踏家、松岡涼子を描いたシリーズからのもの。2015年Operation Table企画展「漂着」に松岡が参加したときに、生島に依頼し特別出品していただいた。
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安田尚平
1976年 北九州市に生まれる。2001年 東京ガラス工芸研究所卒業。2010年 Studio Yo-toBee 設立。2002年 New Glass Review23に選定される。(米コーニングガラス美術館)参加した展覧会は2007年 北九州をめぐるアート展vol2(旧百三十銀行ギャラリー/北九州)、2010年 板ガラスの可能性展(ギャラリーカラニス/東京)、2015年 アトリエWarabi vol1(蕨市歴史民俗資料館/埼玉県) など。
2017年、八万湯プロジェクトメンバー、金森重樹が企画した「ずとち」に、金森のガラス製オブジェの制作を指導したことを契機に参加した。
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ナカムラタツヤ
1964年 福岡県生まれ。1993年コンテンポラリーアートの冒険(IMS/福岡市)をはじめとして、福岡アジア美術館、福岡県立美術館、北九州市立美術館、下関市美術館、佐賀県立美術館ほか、主に福岡市や北九州市で数々のグループ展に参加してきた。2014年以来、九州制作会議に毎回参加。個展は2001年「Drift Art Project」(旧百三十銀行ギャラリー/北九州市)、2005年「GANGLION」、2014年「うたかた」」どちらも(CA gallery/宗像市)がある。金属の錆を布や石に定着させたり、廃棄された材木やそれらを燃焼させた灰をつかったオブジェでインスタレーションを行い物質の在りかたの変化で時間の推移を表象する作品を発表してきた。
八万湯では2017年金森重樹の企画により開催された「ずとち」に参加した。
2017年「ずとち」に参加した出品作の再現。八万湯では、並んだ洗い場に残っていた実物の鏡を使ってのインスタレーションだった。八幡東区に残る銭湯では、近隣で処分される個人家屋の廃材を燃料としたそうで、そのような廃材と、それが燃料となって残された灰を固めたオブジェによるインスタレーションだった。今回はQMACレジデンス・ルームの浴室が舞台となった。
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澤登恭子
神奈川生まれ山口市在住。 2000年東京藝術大学大学院美術研究科壁画研究室修了後、国内外で作品を発表。 音を奏でるレコードに蜂蜜を垂らし舐める伝説的パフォーマンス "Honey,Beauty and Tasty"で脚光を浴びる。大学院修了制作として発表された後、国内外で再演を重ねてきた。2013年、八万湯プロジェクト企画八万湯食堂vol.2 『銭湯でライブも乙なもの!?の巻』」として「澤登恭子×諸岡光男×シンマルマルビジュツカン」のパフォーマンスが催され、澤登は"Honey,Beauty and Tasty"を上演。また2015年、同じく八万湯プロジェクトの企画として、gallery SOAPにて展覧会「きっと、だれもが、だれかに、恋をする」が開催されたが、そのオープニング・プログラムとして"Honey,Beauty and Tasty"を再び上演した。
近年の個展に2018年「ロンド~繰り返し見る夢の続き」(山口県旧県会議事堂)、2019年「春の嵐」(Operation Table)、「RONDO」(特定非営利活動法人CAS/大阪)がある。
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中野良寿
香川県生まれ、山口市在住、1993年東京藝術大学美術研究科壁画研究室修了。1994年、スコットランドにあるR.シュタイナー関連のテンプル・ヒル・コミュニティーに滞在。2001年からの山口大学教育学部美術教育教室での教育活動、山口現代藝術研究所[YICA]での活動、ソロ・アーティストとしての活動の他、コラボレーション・ユニット"ノーヴァヤ ・リューストラ"の活動など国内外で環境をテーマにした作品を発表(NEW TOWN ART TOWN(岡山)、釜山ビエンナーレ2004(韓国)など展覧会多数)。2014年より山口市内にあるオルタナティヴ・スペースN3ART Lab代表。[かがわ・山なみ芸術祭 瀬戸内国際芸術祭2016パートナーシップ事業web pageから引用 http://www.monohouse.org/yamanami/2016/artist/Nakano_Yoshihisa/index.html]
八万湯プロジェクト企画や北九州での発表には、2005年 個展 "Stics-under the window" (北九州市立旧百三十銀行ギャラリー)、2011年6月"Rebirth GION Hachimanyu" 、2012年"BlueSheetStation"(八万湯+さくら通り商店街/北九州市八幡東区)、2013年「甕覗の鏡 中野良寿+澤登恭子」(Operation Table)がある。
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上2枚:〈ADIEU HACHIMAN-YU 会場 〉
下2枚:〈2010年八万湯での個展”CIRCURATE”会場〉
安部貴住
1976年大分生まれ、九州産業大学芸術学部美術学科彫刻コース卒業の後、2001年九州産業大学芸術学部美術学科彫刻コース研究生修了、2000年より2002年まで共同アトリエ3号倉庫に参加、その後2004年に非営利のオルタナティヴスペース「art space tetra」を共同で設立。デヴィッドソン大学(ノースカロライナ州)レジデンスや「福・北美術往来展(北九州市立美術館/福岡市美術館)」、九州日仏学館での個展などの展覧会に出品してきた。「arts pace tetra」のメンバーとしても活躍。
八万湯関連では2005年の「第5回八幡現代美術展」で"STORE+AGES"(旧百三十銀行ギャラリー)を発表。2010年に八万湯プロジェクト、シンマルマルビジュツカンプロジェクト企画で八万湯にて個展"CIRCULATE"開催、一面に水滴が付着したように見えるスクリーンを張った大きな額縁と、多数の水を溜めたプラスティック袋を天井から吊ったインスタレーションを発表し、アーティストトークやサウンドパフォーマンスも行った。この大額縁の作品 "CIRCULATE"は、2011年に福岡市親不孝通りにあるクラブ、デカダンデラックスでも一晩だけの展示を行い、また2013年梅花堂(大阪)での個展にも出品した。
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上3枚:「ADIEU HACHIMAN-YU part2」会場、下2点:2009年八万湯での"WATABE YUJI ONE NIGHT SHOW01"展示風景。ほぼ原寸大に描いた森のドローイングを展示し、画面には正面から液晶プロジェクターによる白い光を投射、画面が変わると虹の映像が映し出され、森の絵に重なり、また虹が消え元の画面に戻るという、写実の紙面と映像が重なるインスタレーションを行った。(「八万湯プロジェクト・ドキュメント from ORIGIN to BSS 1996-2012」参照)
渡部裕二
1974年三重県生まれ。1997年名古屋芸術大学卒業の後、1999年~2001年CCA北九州に在籍、また2003~2005年CCAレジデンスプログラムにも参加した。八万湯プロジェクト企画ほか北九州での展覧会には、2007年「街じゅうアート in 北九州2007~ものづくり・ものアート」、2009年5月「千草ホテル中庭PROJECT-アート・ホスピタリティvol.3待つことに/Waiting For」(千草ホテル/北九州)、2009年8月八万湯プロジェクト企画による"WATABE YUJI ONE NIGHT SHOW01"、2010年「八幡クロニクル」(八幡市民会館/北九州)がある。自身で編集刊行したテキストブックがあり、その中で今回出品のドローイングへ以下の言及がある。「ドローング:内的世界の細分化 ー ここでの感覚的時間軸は私個人の中の時間軸であり、「記憶」「思い出」は私にのみ理解できるものだ。それらによって形成されている「内的世界」は誰にも干渉されることはない。私はその「内的世界」を細分化する。即ち、そこにあるすべてのものの在り様について考えることだ。より細かく、一つ一つを丁寧にみることによって細分化された断片は何一つ必要とされないモノがないことに気付くことができる。
つまり、些細なカケラの存在が大きな世界を存在させていること、を見出すことができるのだ。」
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中川陽介
2005年東京芸術大学美術学部先端芸術表現科卒業。アーティスト活動と並行して美術館の映像制作やカタログ制作を手がける。保存・修復・収蔵・データとしての作品のあり方に興味を持ち調査や制作を行っている。2014年八万湯プロジェクト企画個展《STAND! ALONE!!》、2015年「きっと、だれもが、だれかに、恋をする」 (ギャラリーSOAP)に参加。その他では「private,private わたしをひらくコレクション 」(埼玉県立近代美術館 2015年)、「MERZ」(HAGIWARA PROJECTS 2017年)、作品証明書やエディションに注目した展覧会「EDITION BOX」(higure 17-15cas)の企画、2020年「TORIDE ART PROJECT ヤギの目でアートと社会を見るためのプロジェクト」「FURUKAWA LAB 歩くコンサート0 」に参加、《Multiple Visitor Guidelines(東京国立博物館)》を発表。現在、 東京芸術大学美術研究科先端芸術表現専攻に在籍。
[参照 http://artlivestoride.com/artist/yousuke-nakagawa.html]
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村田峰紀
1979年群馬県生まれ、前橋市在住。2005年多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。2009年頃から白いシャツを着て、ジーンズのポケットに入れたクレパスを次々と握って背中に線を描くパフォーマンスを始めた。«原初的な行為=「搔く」ことを、間接的な表象=「書く」「描く」ことへと展開させ»るものだと自身で語る。背中に描くという見えないままの行為は、クレパスだけでなくボールペンによるものもあり、描く媒体は自身の身体から、厚い合板や金属板、TVモニターの画面などにも広がった。また見えないまま描く方法は箱に閉じこもり腕を突き出して描く、などの設定でも行われた。国内各地のほかドレスデン(独)や台北国際芸術村、ブザンソン(仏)など、海外でも数多くのパフォーマンスを上演してきた。
八万湯プロジェクト関連では、2012年6月7日(木曜日)16:00~ 2012年4月1日"BlueSheetStation"に参加、八万湯そばの桜通りで開かれた〈さくら祭り〉会場内にて「背中に描く」パフォーマンスをおこなった。また同年6月、八万湯にてパフォーマンス「女湯」上演。”ADIEU HACHIMAN-YU part2”では、最終日、3月28日にQMAC壁画のある隣接駐車場にてドローイング・パフォーマンスを行った。
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諸岡光男
佐賀県生まれ、福岡県在住。旧大賀APスタジオを経て、現在art space tetraの運営メンバー。「Make:Tokyo Metting 05」(東京工業大学/2010)など、作品発表とともにパフォーマーとしても活躍する。2006年頃よりブラウン管テレビを用いた音/光(映像)を使用した演奏を開始。近年はプログラム/センサーを用いて、物の動き・光・音を繋げるパフォーマンスを行っている。art space tetra企画の活動に、2007年 "art space tetra open space"にて10年間のライブ、展示の記録映像を出展、2009年 Nick Hoffman + 諸岡光男、坂口壱彦、HERCEL(art space tetra)、2010年 capture meets 沖縄 at KICHI (STUDIO APARTMENT KICHI/沖縄)、2014年「音と平面 諸岡光男/田熊沙織」(art space tetra)、 2019年"art space tetra open space"などがある。
八万湯プロジェクト企画により2011年個展"December 2011"が開催され、クロージングライブイベントには「ニールマナ(弾き語り)+ 吉濱 翔(沖縄よりSkypeでの参加)+ 藤岡 定 (sadmb) ÷ anno lab.(オーディオ・ビジュアル・パフォーマンス)+ 小山 冴子(弾き語り)×生島 国宜(ライブペインティング)+ Lyopsy108(尺八・電気)×諸岡 光男(映像)」が行われた。
”ADIEU HACHIMAN-YU part2”では、最終日、3月28日にOperation Tableギャラリーにて「光+音響パフォーマンス」を行った。
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高橋梢
2001年~2005年CASK(コンテンポラリー・アート・ソサエティ北九州)事務局、2005年からAIK(NPO法人アートインスティテュート北九州)事務局、2005年から2009年までAIKが指定管理者となった旧百三十銀行ギャラリーの運営に携わる。その後、2009年から2014年まで八万湯プロジェクトのメンバーとなりアートマネージメントを担当した。2014年、家族の転勤で北九州を離れ、現在、宮崎市在住。
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3月20日(土)にアーティストフォーラムとして「八万湯フォーエバー」を開催しました。
2021年3月20日 14:00~15:30 @Operation Table
アーティスト・フォーラム「八万湯フォーエバー」
司会進行:花田伸一
出席:宮川敬一、森秀信、鈴木淳、鶴留一彦、松野真知、谷尾勇滋、中野良寿、澤登恭子、安田尚平
前半では出席者各自が八万湯プロジェクトとの関わり、八万湯を舞台に行ってきたことについて報告、後半では、八万湯の建物が消滅したあと、これからの活動に向けて何が可能か、メンバー各位と八万湯プロジェクトはアートの状況にどう関わってゆくのか、などが語られました。八万湯プロジェクト約20年の活動を振り返ることで、プロジェクトのメンバーが役割分担を固定しなかったこと、各自の作品制作や発表の場として八万湯という場所を利用しただけでなく、展覧会や研究会、イベントの企画をおこない、プロジェクトメンバー以外のゲストを招くなど、八万湯という組織がときには地域を超えたアート状況に介入していたことがわかりました。記録映像をYoutubeにUPしています。撮影と編集は、福岡市在住の映像作家、福田康紀さんによるものです。
Youtubeはこちら
瓦礫から「うつわ」をつくること - 「ADIEU HACHIMAN-YU part2」展 -
江上 賢一郎
場所はいつか消えてしまう。個人や集団の活動の終了や解散がそのきっかけとなる場合もあれば、物理的に建物が無くなってしまう場合もある。この10年ほど個人的にアジア各地のアートスペースや文化空間を巡っていたが、その多くはもう存在していない。立ち退き、取り壊し、移転から、活動の中止、集団の解散など様々な理由で場所は消えていく。それまで当然のようにそこにあって、毎日のように人が集まり、様々な活動を生み出していた場所であっても、一旦失われるとその記憶、特にその場特有の雰囲気や質感を探り出すことはとても難しくなる。
2020年、北九州市東八幡区にあった一軒の銭湯が取り壊された。独特の曲線と青いタイルで構成されたファサードを持つこの銭湯は、1960年代に建てられ銭湯としての役目を終えたあと、1995年にアーティストユニット「Second Planet」によって再発見される。銭湯の屋号をそのまま継承したプロジェクト「八万湯」がスタートし、この場所を借り受けアーティストたちの倉庫・スタジオから次第に地元のアートコミュニティの集会所へと変化しつつ、この場所を拠点にさまざまなアートプロジェクトが生まれていく。2000年代初頭に活動を一時中断するが、2009年以降の再起動以降、新メンバーの加入、展覧会・個展の開催やレクチャーや上映会、町歩きプロジェクトなど幅広い文化・芸術活動の場へと展開していった。昭和の高度経済成長期に労働者とその家族の生活インフラとして建てられた場所が、平成に入り一地方都市でサバイブする現代アートシーンのインフラとして生まれ変わったのだ。
ところで、2021年4月まで京都・京セラ美術館で開催されていた展覧会「平成美術」(企画・監修 椹木野衣)は、平成の30年間に起きた日本の現代アートの動向と特徴を、震災や災害、原発事故の連鎖といった「傷ついた時間」のなかで生まれた美術家たちの離散と集合の動きと、その運動のなかで生み出された凝縮された物質=作品を、「うたかた」と「瓦礫」というアレゴリーを用いて掬い上げる試みであった。80年代、90年代の北九州は鉄鋼業の衰退による戦後日本社会の復興・成長神話の終わりを東京や大阪といった大都市よりも一足先に経験している。そいういう意味で、八万湯の(偶然の出会いによる)成立と活動の変化は、ポスト成長時代における日本の地方における現代アートシーンの現実の反映であり、美術・文化活動が直面する諸問題(制作や発表の困難、文化的インフラの脆弱さ、そして生計の不安定さを含む)に対する応答の歴史だと言える。長い下り坂を下りていく都市のなかで活動を試みる美術家、文化労働者たちが、瓦礫のなかからまず作り上げようとしたものは、「作品の手前」、作品の制作、発表、企画、交流といった作家たちの離散・集合の往還運動を受け止める「うつわ」であり、その意味で八万湯は昭和という時代の瓦礫からつぎはぎして作られた文化・芸術の「うつわ」でもあった。
この「うつわ」の記憶を誰が、どのように継承していくのか。東アジアの視覚文化を研究するパン・ルー(蕃律)は、近年の文化・芸術実践の「アーカイヴ的転回」に言及し、従来のテキストに基づく公の記録という静的なアーカイヴから、さまざまなメディアを用いた流動的で可変的なアーカイブのあり方を指摘し、かつては私的な領域に閉じていた「日常のありふれた経験」を私たちの共通の記憶として蘇生させ、広く共有していく実践を「ソーシャリー ・エンゲイジド ・アーカイヴ」と呼んでいる。Operettion Tableで開催された本展覧会「 ADIEU HACHIMAN-YU part2」もまた、この「うつわ」の個人的な記憶の「引き揚げ(サルベージ)」と、そのソーシャルなアーカイヴ(共有化)を意図している。これまで八万湯と関わりを持ってきたメンバー、美術家を中心に、過去作品の再展示や再製作が展示され、1996年から2009年までの活動記録集や会期中に企画されたオンライン座談会を通じて作家それぞれの場所への関わり方の密度、距離の遠近が示されていた。この場所への関与の様々な遠近は、本展の個々の作品にも反映されている。建物そのものの記憶、その物質性へのアプローチ(鈴木淳、谷尾勇滋、ナカムラタツヤ)や、地域の集合的歴史の探求(森秀信)といった、作品を通じた場所や都市の過去・記憶への参照というアプローチがある一方、作家自身の個人的な場所への関与や、過去の展示活動を基にした作品(福地英臣、松本了一、松野真知、金森重樹、生島国宜、安田尚平)、またメンバーとして関わりつつ継続的に制作されてきた作品(鶴留一彦、Second Planet)と多様だが、それぞれの作品は「失われた場所」の不在の輪郭線を各自の方法によってなぞり、その場所が持っていたかつての質的な触感、雰囲気やそこでの活動やプロジェクトの断片を抽出し、作品という形式で物質化させ掬い上げようとする「アーカイヴ」的実践だと言えるだろう。私たちは、これらの作品=「うつわ」の断片を通じて、今は存在しない場所を想起し、また日本の地方都市のなかに自生してきたポスト成長時代の文化・芸術の集合的な実践の領野に再び出会うことができるのだ。
(文化研究 / 福岡アジア美術館・九州産業大学非常勤講師)