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News


開催中の「風に吹かれて〜 諏訪眞理子・西松秀祐・よしもりむつこ 大分からの3人」、出品作家やゲストによるパフォーマンスやワークショップはすでにご案内していましたが、10月3日(土)、黒ダライ児さんに「風倉匠のパフォーマンス 大分からダッカまで」という講演をお願いすることが急遽決まりました。黒ダさんは1993~94年に福岡市術館で「流動する美術-III ネオ・ダダの写真」を企画開催、その会期中に風倉による伝説的なパフォーマンス「ピアノを打つ」が実現されています。

9月19日から始まる「風に吹かれて〜 諏訪眞理子・西松秀祐・よしもりむつこ 大分からの3人」をご案内します。

 
風に吹かれて〜 諏訪眞理子・西松秀祐・よしもりむつこ 大分からの3人
会期:2026年9月19日(土)〜10月11日(日)
金土日11:00~18:00 オープン 月~木は予約にてオープン
9/21~23(月~水・祝)はオープン、9/25(金)は休み
TEL;090-7384-8169 email;info@operation-table.com
会場:Operation Table/QMAC
805-0027 北九州市八幡東区東鉄町8-18
operation-table.com

1960~70年代、ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズの一員として前衛美術史に名を轟かせた風倉匠は大分出身、1979年に大分に帰住し、自身の活動を続けると同時に福岡や大分で次世代の美術家たちに薫陶を授けた。この展覧会は風倉の追悼展ではなく、現在大分にて美術家として活動する諏訪眞理子、西松秀祐、よしもりむつこ、3名の作品を通して、ネオ・ダダの奇才が大分に振り撒いた気配を感じとるものとなる。よしもりは、風倉が80年代半ばに主宰した「日常教室」の常連だった。諏訪は風倉の存在を認識しつつも距離を保ち制作活動を続けた。西松は風倉没後数年して大分に移住しその不在を感受しながら自身の活動を展開している。3名による写真、映像、ドローイング、立体作品のインスタレーションで、会期中、パフォーマンスやワークショップも開催される。

〈会場写真〉
風倉作品を展示する予定はなかったのですが、風倉大分在住時代に「日常教室」の事務局を務めていて、今回資料提供いただいた大塚晶子さんご所蔵の風倉作品を借用できて展示することになりました。

   
1. 風倉匠「(タイトル不明)」鉛•パネル よしもりむつこ蔵 2. 風倉匠 上左;タイトル不明、木材•絵具•サグラダファミリアの入場券など、1998年 大塚晶子蔵 上右;陰陽学シリーズ 1970/2000年 大塚晶子蔵 下段2点 タイトル不明(リリパッド王国シリーズ)、絵具•額装 よしもりむつこ蔵 3. 風倉匠「鳥が未知の闇を開く」1962年 大塚晶子蔵







4. 諏訪真理子  (左から)「ツリーリングス•ドローイング ビデオ•サウンド 2024~26年 「津屋崎ボウル/玉乃井ボウル ビデオ•サウンド 「思い出インタビュー」安部文範さんについての「思い出インタビュー」/風倉匠さんについての「思い出インタビュー」 ビデオ•サウンド 2025~26年

 
5. よしもりむつこ (左から)「プログラムは変えられるのか?」 竹•針金•布•和紙•綿•土•ボンド•絵具•糸 2026年 6. よしもりむつこ 「実験」ポールによるインスタレーション@エントランス(部分) 2026年

 
7. 西松秀祐「渡り鳥についての試し書き」 ビデオ 2026年 文房具店の試し書きの中には、一見鳥の形のような試し書きが数多くある。西松が移動先で集めた様々な筆致によるアニメーション作品。 8. 西松秀祐 メインギャラリー隣室 (正面)「誰かとの一枚」スライド写真 2026年 公衆トイレのトイレットペーパーの誰かが破った跡と自分が破った跡を記録した写真たち。 (左隅)「スーパーマーケットの小さな惑星」土(スーパーで購入した野菜に付着していたもの)•テキスト スーパーで購入した野菜に付着していた土を用いて制作された泥団子。テキストにはその泥団子を作るきっかけになったエピソードが記載されている。 (右;ベッドの上)「(仮)満員電車の中で変形したマスクのような形」 陶器 2026年 満員電車の中、西松の持つかばんの中で変形したマスクのような形。


《会期中イベント》

1.オープニングトーク 2026年9月19日(土) 14:00~
諏訪眞理子x西松秀祐xよしもりむつこx真武真喜子
参加費:1,500円(終演後レセプション+500円)

2.西松秀祐 パフォーマンス 「手術台の上のコピー機〜コピー機を分解しながら風倉匠を考える」
2026年9月22日(火・祝) 14:00~
参加費:1,000円 (終演後のお茶wineの会+500円)

3.よしもりむつこ ワークショップ「どろんこ話交流会」
2026年9月23日(水・祝) 14:00~
参加費:1,000円 (終演後のお茶wineの会+500円)

4.特別講演
黒ダライ児「風倉匠のパフォーマンス 大分からダッカまで」
日時:2026年10月3日(土) 14:00〜
参加料:1,000円 (終演後レセプション +500円)
場所:Operation Table

福岡市美術館学芸員として「九州派展」(1988 年 )、「ネオ・ダダの写真」(1993 年 )、「『集団蜘蛛 』の軌跡」(1997 年 )を開催。1999年から2021年まで福岡アジア美術館。 黒ダライ児名で「肉体のアナーキズム 1960年代・日本美術におけるパフォーマンスの地下水脈」(2010年)、黒田名で「終わりなき近代 アジア美術を歩く2009-2014」(ともにgrambooks)刊行。「肉体のアナーキズム」により芸術選奨受賞(2011年)。1991、1995年にバングラデシュ・アジア美術ビエンナーレのコミッショナーを務め、1995年には風倉匠を選出。2027年にアジア美術論集を刊行予定。

5.諏訪眞理子 パフォーマンス「ツリーリングス・ドローイング for 風倉」
2026年10月11日(日) 14:00~
参加費:1,000円

6.松岡涼子(舞踏家) パフォーマンス「風に吹かれて舞う」
2026年10月11日(日) 15:00~
参加費:1,000円 (終演後 クロージングパーティ+500円)


《出品作家コメント》

風の正体 諏訪眞理子

「風倉さんんと言うすごい芸術家が、東京から帰ってきたらしいよ。」と聞いたのは、私が20歳ぐらい。
それから、「諏訪根自子って言うバイオリニストがいたね。」って、風倉さんに言われたのは、初めて風倉さんと会った時のことだと思う。それが何時だったか、誰かと一緒だったかは、忘れてしまったが、そう言われたのは、憶えている。
2001年、大分市のセブンポイントで個展をやった。設営日、脚立に載って農業用のビニールシートを天井から吊り下げる作業をしていたら、風倉さんが、ふらりと訪ねて来て、「『薄膜』って、マルセル・デユシャンの『薄膜』でしょ。ほら、遺作の、穴から覗き見る作品があるでしょ。」と言った。
私は、それまで「薄膜-Film」と言うタイトルで作品を作っていたのだが、セブンポイントでの展示は、ビニールシートをカーテン状に張って部屋を、二分するというごくシンプルなものだった。
風倉さんの言う、デユシャンの「薄膜」という概念「アンフラマンス」については、全く知らなかったのだ。
2002年、私は、足の病気の再発をして再び入院、手術、リハビリで、普段の生活にはまだ、杖が必要だった。大分市美術館で行われる田中泯さんの舞踏を見に行った際に、風倉さんとも会った。杖を突いている私の格好を見て風倉さんは、「杖を突いているのが、かっこいいね。」と言った。
2004年ごろ、『風倉さんが、「大分の人は冷たい、福岡に行こうと思っている。」と言っている。
「諏訪さん、風倉さんのファンクラブを作って風倉先生を励まそうと思うから参加してくれない。』とKさんからお誘いを受けた。湯布院亀の井別荘での本当に少人数のサロンのような会が何回か開催された。
その際、風倉さんは、皆に、自然の板目を板木にして刷った小品をプレゼントされた。私も頂いた。私は、そのお礼に、「風」という文字と、他の文字(般若心経だったかな?)をランダムに組み合わせてプリントしたTシャツを自分で作ってプレゼントした。しばらくしたら、風倉さんから、写真が届いた。そのTシャツを着て、熊本現美でパフォーマンスをする風倉さんが写っていた。

今回、真武さんから、お話を頂いて、とにかく、風倉さんについては、前記の通りで、それ以外の知らないことを知る必要があった。最初に手をつけたのは、赤瀬川原平の本だった。そして、あの「雪野」(尾辻克彦著)を読んだ。菅章さんの本「ネオ・ダダの逆説」もやっと読めた。実は、老眼で読書は諦めていたのだが、裸眼にすると、まだ、本が読めることも同時に発見した。黒ダさんの分厚い本!「肉体のアナーキズム」も初めて手に取れた。こんなことがなければ、出会わなかった本だった。
同時に部屋の隅にある資料から、風倉さんの資料を探した。それが、意外にも存在したのには、私自身驚いた。それが今思えば不思議な縁で手元に来た資料もあれば、私以上に風倉さんのファンを自称する人たちから頂いた資料もあった。その資料を読み返した。その他読みたい資料は、図書館から借りた。
当初展覧会の予定は、6月開催だったから、「思い出インタビュー」を、3月頃から開始した。そんな中、今回、参加の作家、よしもりむつこさんにインタビューを頼んだ。すると、彼女は、風倉さんの日常教室に通っていたこともあり、風倉さんのパフォーマンスなどを数多く録画しており、ビデオテープから変換されたDVDを快く貸してくれた。借りて2、3回興味深く見た。特に、福岡市美での「ピアノを打つ」には、特に興味を惹かれたが、と同時に、ピアノを鞭で打つ、と言う行為が、とても、不可解だった。どうして、ピアノを鞭で打つのか?暴力的なその行為が何を意味するのか、気になった。そんな折、手元にあった資料を読み返していると、ふと、そのイベントの元となった32年前のハプニングは、映画「鎖陰」のためのものだったことが分かった。さらに、その真意は、「鎖陰」を見なければ分からない事が、分かった。
このようにして、私は、風倉さんを、探した。探そうとすればするほど、風倉さんは、分からない人になって行った。私の中に確かに実感としてあるのは、風倉さんが私に無意識になげかけた言葉だけだった。
何人かの、貴重な友人から、風倉さんについての思い出をビデオを握って、緊張して、聞いた。そんな、彼や彼女達の言葉を聞いて、実は、風倉さんは、私たちとちっとも変わらない、同じ人なんじゃないかと、当たり前な答えに着地した。
シュールな絵のように、大分という土地の上空に、風倉さんのシルエットが浮かぶ。そのイメージを、私は、そっと大事に心の内に閉まってきた。


西松秀祐

風倉匠著作による『時計の振子』、菅章著作による『ネオ・ダダの逆説――反芸術と芸術』、そしてアートプラザに所蔵されている数点の作品と数冊の展覧会カタログ。私が風倉匠について知っている情報はかなり限られている。でも、『時計の振子』の中で語られる風倉のある言葉は、特に記憶に残り、何度も私が大分で活動する上での自分の態度のようなものを問いかけてくる。

その言葉は、風倉匠編著による『時計の振子』に抜粋されている、「美術をめぐる思想と評論 機關12 風倉匠特集」の中の、風倉匠と菊畑茂久馬の対談の一部にある。
菊畑がまず風倉に対し「パイクはいち早くイヴェントの風化現象を読み取って、(中略)今やビデオアートの教祖として、国際的に活躍しているよね。(中略)六十年代ハプナーのおとしまえとして、このように道が分かれる、(笑)こんなふうなことは、風倉さんはどのように思う?」と尋ねると、風倉はこう答えた。

「うーん、芸術というのは、ある種の不幸の上に成立してるんじゃないかって思うわけ。いつも不幸が材料になっていると思う。それは音楽でも云えると思う。で、僕は無キズでいたいと思う。不幸も嫌いだし、かさばった幸せも嫌いだ。すべてそっと自分をしておきたいという気持があるわけだよ。だから批判はしない。大きくなるということは、不本意ながら反面、不幸になっていくんじゃないかと思う。余計なことはしたくないんだ。僕は。」

もちろん、椅子に倒れ続けるハプニングをして鎖骨を折ったり、焼き鏝を胸に押し付けて気絶したりと、確実に「無キズ」なわけがない風倉の言葉だ。その言葉の真意は、前後の文脈もあるので、はっきりとは分からない。ただ私は、美術の世界での成功と地方で活動することとの距離感、そして作家としての制作態度についての言葉として、この風倉の言葉を理解している。
制作時期も作品のスタイルも、風倉と私はまったく違う。でも、2018年から大分県を活動拠点にしている私にとって、地方で活動を続けた一人の先輩として、この風倉の態度にどこかシンパシーのようなものを感じると同時に、半信半疑にも受け止めている。やはり「余計なことはしなくちゃいけないでしょ」と思い、自分を鼓舞することもある。

この「……余計なことはしたくないんだ。僕は。」という風倉の言葉に対して、菊畑は「これぞ風倉節、ぴしゃりと決まる」と述べていた。私のこの言葉についての解釈、そして半信半疑な自分に対して、風倉ならどのように「ぴしゃり」と決めてくれるのか。そんなことをたまに想像する。


風倉さんと出会って! よしもりむつこ

日常教室に初めて行ったのは芸短大2年、学校やめようかな〜と草むらで昼寝ばかりの毎日でした。
当時、「芸術家=食えない人」が常識の田舎では、質問はいつも「どうやって食ってますか?」でした。
そして、その質問は芸術家であるほど多く浴びせかけられていました。
確かにコーヒーの出がらしをさらに沸かして飲んでいた事は皆の知るところですが…ある時、風倉さんが「貧乏を愉しむ!」とひと言誇らしげに言いました。その時に、本当だなーと思ったのです。
この「貧乏」はあらゆる事に差し替えられて、私の中の名言として刻まれています。


     
諏訪真理子 左の2点:「津屋崎ボウル」映像インスタレーション 2014 3点目:"Tree rings drawing" シングルチャンネルビデオ 2024
右端:「ツリーリングス・ドローイング」 パフォーマンス 辻小野山西明寺 カタスミルンルン芸術祭 山香2024.





風倉匠『無題」鉛板1990年代 [福岡市美でのピアノ解体パフォーマンスの後、各部を鉛でつくられていた頃の小品。
諏訪さんからいただいた。同時代人ナムジュン・パイクとのパフォーマンスもすばらしかった。 (安部文範記)

     
西松秀祐 左から スーパーマーケットの小さな惑星 2015 土(スーパーで購入した野菜に付着していたもの) / テキスト Φ75 mm / A Breathe of Time 展示風景 2024年 @Grand Huit /  Variations in Time 展示風景 2024年 @別府市創造交流発信拠点『TRANSIT』 ©️Takashi Kubo/BEPPU PROJECT /  未完の作品設計図(風倉匠へのオマージュ)サイアノタイプ 2025年

     
よしもりむつこ 左から Monster Exhibition 2020 / 森の庭アート展 2025@両子寺/大分
「木の音を聴く」森の庭アート展 2025@両子寺/大分 / 別府センペルビウム 2023/大分


《出品作家CV》

諏訪眞理子 SUWA MARIKO

大分県出身 大分市在住
大分県立芸術短期大学美術科絵画卒業、同専攻科修了
空間を認知する感覚にすぐれ、その場に呼応した装置としての作品を仕掛け、場を変容させることを、得意とする。それは、音声や映像、写真およびインスタレーション、イベント、パフォーマンスなどの多様なメディアで、表現される。

1984 北九州絵画ビエンナーレ 北九州市立美術館/福岡
1985 「ONE BY ONE-Motive」個展 大分県立芸術会館/大分
1991.1993. 「Tin-Plate Ⅰ」個展 秋山画廊/東京
1995.1996.「薄膜―Film Ⅰ」個展 えだ画廊/大分
1995.1997.「薄膜―Film Ⅰ」個展 秋山画廊/東京
1998 アーティストキャンプ in ASO 小国町北里大社/熊本
「薄膜―Film Ⅲ・浮光」個展 アルカイック ギャラリー/大分
1999 アーティストキャンプ in ASO 小国町万成小学校/熊本
2000 「Skin」個展 セブンポイント/大分
大分の現代美術 10.「空蝉」個展 アートプラザ 2Fアートホール/大分
2002 大分現代美術展2002 アート循環系サイト展 大分市美術館・大分市内各所/大分
「Here 此ノ岸」個展 Art Space 獏/福岡
2005 「大分の現代作家たち」 大分市美術館/大分
「渋谷区千駄ヶ谷3-7-6・梅ノ木のあった家」個展 秋山画廊/東京
佐藤さんのためのPlan 1「途中」 DAR VIDA建築現場/大分
2006 国民文化祭やまぐち2006 宇部彫刻展「働きます」 宇部三炭町商店街/山口
「平面と空間 ̶絵画の新世代̶」 アートプラザ 60’sホール/大分
『旧玉乃井旅館 解体と再生プロジェクト「家」―最後の家族の物語』旧玉乃井旅館/福岡
佐藤さんのためのPlan 2「白丹」 DAR VIDA建築現場/大分
2008 「あなたと楠木生のクスノキのことを教えてください」アートプラザアウトリーチ楠木生/大分
2010 津屋崎現代美術展 「うつすことを巡って」 旧玉乃井旅館/福岡
2012 「かすてら学 長崎を学ぶ 折り鶴とロザリオ」 長崎県立美術館/長崎
2014 第9回「津屋崎現代美術展」 旧玉乃井旅館/福岡
2016 「同居人新聞」(同居人シリーズをまとめた新聞)発行
Plan発表「草美術」ワークショップ「草にまつわる物語を紡ぐ」地域デザインの学校・戸次/大分
2018. ‘19. ‘20. 「よいやかがり火」照明、白壁映像投影 戸次/大分
2021 サマー企画 アートワンダーランド2021 大分市美術館/大分
2022 サマー企画 アートワンダーランド2022「怖いーこわーい美術館ー」大分市美術館/大分
2023 「アートの美力・地域の魅力 アートレジオン コレクション」 アートプラザアートホール/大分
2024 "Tree rings drawing" 加藤理容所 由布市/大分
「旅枕茶会」 アルアワス2階広間 杵築市山香町若宮商店街/大分
カタスミルンルン芸術祭 辻小野山西明寺・小野酒造離れ 杵築市山香町/大分
HAJIMARI BEPPU Artist bar「ツリーリングス・ドローイング」別府/大分
前橋映像祭 映像「Tree rings drawing」 群馬
2025 アートフェア別府2025 別府ビーコンプラザ/大分
「場に宿る夢―記憶の舟にのる―」 旧玉乃井旅館/福岡


西松秀祐 NISHIMATSU SHUSUKE

岐⾩県⽣まれ、杵築市を拠点に活動。
2012年名古屋芸術⼤学芸術学部 (洋画コース) 卒業。
ブランシュバイグ芸術⼤学(ドイツ)にて学ぶ。
映像、テキスト、写真などを用い、人々やその土地が持つ記憶、蓄積られた時間などに目を向け、自身の心の機微を起点に、歴史や社会的な出来事と重ね合わせる詩的な作品を制作している。

〈主な展覧会〉

2021 対馬アートファンタジア 2020-21 対馬市内各所/長崎
2023 遠くの⽅で⾳がする ⼭中suplex別棟「MINE」/⼤阪
あたらしい場所 アートギャラリーミヤウチ/広島
2024 A Breath of Time Grand Huit、Nantes/France
黄金町バザール2024 Studio YUSUI C-2/神奈川
transition #02 Variations in Time(個展)  別府市創造交流発信拠点『TRANSIT』/大分
半井桃水館芸術祭シャンデリア 半井桃水館、対馬市内各所/長崎 
2025 アーティスト・イン・レジデンス・プログラム 2025「あたらしい場所」 アートギャラリーミヤウチ/広島
個展「Anytime」 由布院駅アートホール/大分
アートフェア別府2025 別府ビーコンプラザ/大分
A House in Translation  The Luxelakes CPI Island/成都,中国
2026 AGMアーティスト・イン・レジデンス・プログラム 2026「あたらしい場所」成果発表展(個展)『明日、僕は街を歩いた』 アートギャラリーミヤウチ/広島


よしもりむつこ  YOSHIMORI MUTSUKO

1963年 大分県臼杵市生まれ
2002年 湯布院町塚原に工房を建設
2010年頃 陶土のオブジェ作品を制作、展示発表はじめる
2015年 ベップアートマンス参加(〜2022年まで毎回)
2017年 モンスターエキシビジョン 渋谷ヒカリエ/東京 (〜2024年まで毎回、2017年ニューヨーク展)
2018年 焼かない土の作品に熱中する
2019年 夫(悦治)亡くなる 
銀座アートポイント”心象”参加
個展「よしもりむつこの造形ワールド」 ギャラリー嶋屋/大分
2020年 台北contemporary Art fair参加
2021年 あみだくじモンスター展 ゆふいん駅アートホール/大分
個展「ひばゴンv.s.よしもりむつこのMONSTERS そこに住んでいる」 別府市友情の家/大分
2023年 個展「7つの球体と円盤をめぐる」 別府センベルビウム/大分
2025年 森の庭アート展 両子寺/大分 (2026年)
2026年 Evolving by Monster Kunsthaus Bethanien/Berlin,Germany 
Color ー陶7人展ー 大分県立美術館1Fアトリウム/大分

     *Facebook(吉森睦子)、Instagramから抽出しました。


8月15日(土)に行われた第54回QMACセミナー村田喜代子「わたしの小説のこと話します。」も大入り盛況のうちに終了しました。3名の方の参加感想をSNSから転載させていただきました。

「小原佐和子x山福朱実 どこかにある風景」、8月25日で終了いたしました。西南学院大学国際文化学部(美学・哲学)の柿木伸之先生に展評を寄せていただきました。小原・山福それぞれの写真・版画表現の特質に触れながら、両者の見事なコラボレーションを遁走曲(フーガ)に喩える魅力的な批評となっています。会場写真やWS情景と参加者の作品も公開しています。どうぞご一覧ください。

次回の展覧会【小原佐和子 × 山福朱実『 どこかにある風景 』】と第54回QMACセミナー【村田喜代子「わたしの小説のこと話します。」】のお知らせを下記に掲載しました。


展覧会のご案内

 

小原佐和子 × 山福朱実『 どこかにある風景 』
会期:2026年7月26日(日)~8月16日(日)
  金土日11~18:00/月-木は電話,mail予約制
会 場:Operation Table/QMAC 北九州市八幡東区東鉄町8-18



会場風景(©️小原佐和子)

       
       
       
   



会期中イベント

オープニングトーク 7月26日(日) 14:00~
  小原佐和子×山福朱実+真武真喜子
  参加費:1,500円(終演後の宴は+1,000円)

紙版画WS(山福在廊時のみ) 制作1枚500円
  在廊予定日 8/1,2,8,9,16の14:00~
  ※予約不要 ※予定は変わることがあります

       
       
       
     
     


写真家・映画監督の故 本橋成一氏が立ち上げたポレポレ坐&ポレポレタイムス社の縁で繋がった小原佐和子と山福朱実。沖縄や秩父をテーマに撮影してきた小原は、2017年に故郷へ戻った山福を頼ってしばしば北九州を来訪、戦跡や産業施設が点在している街を注視するようになる。東中野ポレポレつながりの2人が北九州で再会をかさね、この展覧会が決まった。小原は北九州の風景写真、山福はその写真にコラボした木版画を出品。「どこかにある風景」では、北九州在住、或いは住んだことがある、何度も訪れているヒトにとっては思い当たる場所があるかもしれない。北九州を知らないヒトはどこか別の街にも似たような風景があったと、それぞれの記憶を辿るのだろう。

小原佐和子

埼玉県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。2011年個展「神の真庭」新宿ニコンサロン・大阪ニコンサロンを皮切りに、2012年gallery M&A/沖縄市、2018年ギャラリー蒼穹舎/東京で開催、2022年、2022年、2024年には個展「秩父-山の岸辺」「秩父-山の岸辺 II」「秩父-山の岸辺 III」がギャラリー蒼穹舎でそれぞれ開かれている。その他、”La nueva fotografía japonesa”(「親密なひととき 日本写真の新時代」 2012年 スペイン巡回)、「松村久美+小原佐和子写真展 − 沖縄から学ぶ希望 −」(2015年 ギャラリー・ナノリウム / 山梨県富士吉田市)、「平敷兼七 二人展シリーズ vol.9 平敷兼七・小原佐和子『渚』」(2018年 平敷兼七ギャラリー / 沖縄県浦添市)のグループ展に参加。写真集に『神の真庭』(2017年蒼穹舎発行)、『秩父 山の岸辺』(2012年発行、私家版)がある。
http://www.obarasawako.com

     
左から 撮影地:北九州市若松区北浜 ゼラチンシルバープリント/撮影地:北九州市若松区白山 インクジェットプリント(阿波和紙)/撮影地:北九州市八幡東区槻田 九州鉄道茶屋町橋梁 インクジェットプリント(阿波和紙)/撮影地:北九州市門司区西海岸 ゼラチンシルバープリント

山福朱実

1963年北九州市生まれ。2004年に木版画の制作をはじめる。木版画絵本「砂漠の町とサフラン酒」(2005)、創作絵本「ヤマネコ毛布」(2015)があるほか、石牟礼道子「水はみどろの宮」に挿画を制作し出版(2016)、2017年東京生活から北九州へ帰郷、若松に樹の実工房を構える。Operation Tableでは「山福朱実 水はみどろの宮 挿絵版画展」(2017)、「ああ!愛しのメキシコスープ!II 竹田邦夫+山福朱実+南椌椌」(2018)、「山福朱実の版画と記録『山福印刷と樹の実工房』」(2022年)「「遠賀川神話の芸術祭 2025」(2025)などの展覧会に参加。末森樹とのユニットで歌とギターによるライブも展開。Opertion Tableで開かれる展覧会の折々にゲスト出演としてライブを披露してきた。今年6月には「うらんたん文庫10周年記念 山福朱実作品展 "Pandereta (パンデレッタ)Ⅱ"」(うらんたん文庫/福津市)が開催された。また9月には「山福康政・朱実父娘(おやこ)展」を開催予定(一生もんshop緑々あおあお/北九州市)。
https://nekoyanagioffice.blog.jp/archives/65997204.html

   
左から  『工場』 水彩木版画、八女和紙/『ドゴラ対ゴジラ』 水彩木版画、八女和紙/『釣り人』 水彩木版画、八女和紙


作家コメント 『どこかにある風景』について

小原佐和子
写真家・映画監督の本橋成一氏が主宰するポレポレタイムス社で、約10年間にわたり写真助手を務めた。氏にとって筑豊や北九州は、第二の故郷ともいえる特別な場所で、事あるごとにこの地についての話を聞かせてもらった。私自身も、氏の橋渡しによって多くの人たちと出会い、迎え入れられてきた。いつかきちんとこの土地の風景を見て、撮ってみたい。そんな思いを抱いていたところ、朱実さんから北九州での展示に誘われ、とんとん拍子に話が進んだ。
本展のために、若松、小倉、門司を中心に、北九州の戦争や産業の舞台となった場所とその周辺を訪ね歩いた。残された風景から、かつてそこにあった風景や、そこで暮らしていた人、今も暮らしている人たちに思いを巡らせながら撮影した。そして朱実さんは、写真と自身の記憶をつなぎ、新たな風景を木版画にしてくれた。
写真と木版画を通して、それぞれがもつ記憶や風景が立ち上がればと思う。

山福朱実
昨年12月に逝去した写真家・映画監督の本橋成一氏が父を訪ねて若松へ遊びに来たのは、1968年に太陽賞受賞1968年のデビュー写真集『炭鉱(ヤマ)』を撮りに筑豊に通い込んでいた、私がまだ1歳にも満たない頃。そのご縁で20歳を過ぎてポレポレ坐の立ち上げに参加するなど、イラストレーターとして独立するまでの4年間、氏には随分とお世話になった。辞めて年数後に小原さんが氏の助手になる。故郷の印刷屋で育った私にはとても身近な、写真と版画という素材を掛け合わせてみたら面白いかな?と打診し、今展の企画が生まれた。関東人が撮った、北九州の産業、戦争、暮らしの痕跡が泛かぶ写真を、北九州で生まれ育って出戻った私が見て、新たな歴史の発見と記憶のかけらをごちゃ混ぜにしながら、探り探り板木に彫ってゆく。写真と木版画、モノクロの印刷物。本橋師匠にも見に来ていただきたかった。



生の記憶を呼び起こす手仕事の交響
──小原佐和子の写真と山福朱実の版画による「どこかにある風景──北九州のあちこち」に寄せて──

柿木伸之

 田川市美術館で開催された展覧会「コールマイン未来構想II──うつし、うつり、たちあがるもの」(会期は2025年12月7日から2026年2月1日まで)の展示室の一つで、本橋成一の写真と再会した。そこには、福岡の筑豊や北海道の美唄などの炭鉱で働く人々とその家族の懸命な生きざまを追った写真集『炭鉱〈ヤマ〉』の一部が展示されていたが、出品作品からは、本橋が強い思いを抱きながら筑豊に通っていたことがひしひしと伝わってきた。版画家の山福朱実は、この『炭鉱〈ヤマ〉』の頃の本橋と若松で出会っている。
 山福はその後、本橋が東京の東中野にポレポレ坐を立ち上げるのに加わり、「ポレポレ坐」のロゴをはじめ、その広報媒体のデザインを手がけることになる。それから数年後、写真家の小原佐和子は、これも本橋が立ち上げたポレポレタイムス社で十年にわたり写真助手を務めた。2026年7月26日から8月16日までOperation Tableで開催された小原佐和子の写真と山福朱実の木版画による展覧会「どこかにある風景──北九州のあちこち」には、本橋成一の薫陶を受けた二人の作家のこの地での協働の展開が振幅豊かに表わされていた。
 「どこかにある風景」の展示に向けてまず、小原が小倉、八幡、門司、若松など北九州各地の戦跡をはじめ、日本の近代史が刻まれた場所を訪ね回り、その風景を写真に収めていった。すると山福は、写真を基に木版画を制作する。和紙にプリントされた小原の写真に山福が直接描画した作品も出品されていた。そのような一種の掛け合いとしての協働の成果が並ぶのを眺めると、さながら写真と版画の遁走曲(フーガ)が繰り広げられるのをを聴くようだった。そこにある両者の交響は、北九州の「どこか」に潜む未見の光景へ誘う。
 もちろん小原の写真と山福の版画の方向性は、正反対と言えるほど異なっている。先に小原の写真に目を向けるなら、それは防空壕の跡の残る民家の一隅など、ほとんど顧みられることのない場所を捉えながら、その空間を克明に浮かび上がらせる。オープニング・トークのなかでキュレーターの真武真喜子が指摘していたように、小原の写真は、独特の「線」によって貫かれた空間として、それぞれの場所の現在を浮き彫りにしていると言えよう。ただしその現在とは、歴史の堆積の一角に写真家の眼が留まった瞬間である。
 その一角には、人々の営為が幾重にも積み上がり、そのことが建物の造りや街並みを含めた独特の地形をなしている。そのことを捉えるモノクロームの画面は、静謐ですらある記録性を示す。そこに人影はほとんど見られない。小原は一つの場所の空間を、そこが見失われていく時の流れに抗して写真に刻む。現在を捉えたその像のなかに、忘れられた歴史の層が浮かび上がるのが興味深い。そして、この層には人々が働き、暮らした記憶が沈澱している。そのことへの繊細な眼差しも、小原の写真の特徴と思われる。
 そのような眼差しは、例えば、北九州市若松区北浜にある工場の煤けたパイプラインを浮かび上がらせるところに表われていよう。山福の版画は、こうした小原の写真に触発されながら、それとはある意味で反対に、空間に時間的な動きを加える。一つの場所を行き交った、人間を含む生きものたちの生命の記憶を呼び起こすことによって、その場所にありえたかもしれない風景を、独特の音楽として鳴り響かせるとも言えよう。山福の木版画には温かいリズムがあり、それは生きものたちの息遣いとして画面から響いてくる。
 小原が写真に捉えた若松の工場の光景を、山福は一匹の猫の目に映る風景に見立て、そこに烏だろうか、鳥の列を加える。鳥の羽根が動くと、パイプラインも蠕動するかのようだ。工場の通路に立つ人の手から伸びて咲いた花は、鳥の声に応えているようにも、あるいは猫に向けて打ち振られているようにも見える。そのようにさざめきを感じさせる山福の版画を眺めた後で工場の写真を見直すと、風景がより立体的に感じられた。その傍らでは、小原が撮影した若戸大橋の上に広がる空を、山福が描いた魚が悠々と泳いでいる。
 こうして異なった表現が一つの空間のなかで、さらには一つの画面のなかで呼応することによって、北九州に堆積してきた時間が攪拌され、この場所に凝縮された歴史に翻弄された生きものの記憶が呼び覚まされているようだった。小倉城内に残る「軍馬忠霊塔」をめぐる写真と版画の交響は、そのことを示す一例だろう。この塔のひっそりとした佇まいを捉えた小原の写真からは、馬が負わされた歴史の重みを感じる。同時に、戦禍や災害のなかで人間によって棄てられた馬たちの運命にも思いを馳せずにはいられない。
 このような「軍馬忠霊塔」の写真にもとづく山福の木版画において塔は、命の蘇りの舞台として描かれているように見える。一匹の猫が見上げるその舞台からは、翼を持った一対の馬に導かれながら、一頭の馬の魂が「忠霊塔」から脱出して天を駆けようとしている。その動きがリズムを含みながら画面から聞こえてくるのだ。ありえたかもしれない生命の姿を、その光景とともに奏でる木版画の音響は、もしかすると会場の一角に並べられた、山福が絵を加えたタンバリンによって暗示されていたのかもしれない。
 小原との共同作業は、北九州の地で暮らしてきた山福自身の記憶を呼び起こすところがあったにちがいない。それが最も生き生きと表われていたのが、釣り人の姿を海景に浮かび上がらせた写真から生まれた木版画と思われる。その画面では、かつて海辺の工場が煤煙を上げていた様子と、若松の海に棲んでいた、あるいはそこに還ってきたトビエイやイルカが跳ね回る様子とが共鳴している。そして、幾重にも時が折り重なった海の光景が見えているのは、釣り人の傍らに座っている人魚だけではないだろうか。
 その一方で、小原の写真は釣り人が腰掛けている場所が異様な形をしていることを伝えている。それはかつての駆逐艦の船体だった。その上で釣り糸を垂れる姿からは、戦争の近代が積み重なった場所の可能性も感じられる。それが潜む光景を捉えられるのは、旅人だけなのかもしれない。北九州に暮らす人と、そこを訪れた旅人との協働は、この地に潜んでいる風景を浮かび上がらせ、そこに沈澱した記憶を未来へ向けて呼び起こしていく。その風景は「どこか」にある。「どこかにある風景」の展示は、その発見へ観る者を誘う。
 山福と小原が2025年の末に逝去した本橋成一から受け継いだのは、歴史に翻弄された命あるものたちへの細やかな眼差しと、その生きざまを記して伝えるドキュメントの精神ではないだろうか。それとともに手仕事の精神も継承しているにちがいない。山福は本橋の構想を手で形にし、小原は彼の写真の現像を手伝った。「どこかにある風景」で繰り広げられたのは、版画と写真における綿密な手仕事の交響でもある。それが和紙を用いた作品に凝縮されたことは、小倉の塔から蘇った馬によって天に伝えられたのではないだろうか。

(美学、哲学/西南学院大学国際文化学部)


「どこかにある風景」会期中、最終日の前日、8月15日終戦の日に開かれる第54回QMACセミナーをご案内します。

第54回QMACセミナー

村田喜代子「わたしの小説のこと話します。」
 日時:2026年8月15日(土)14:00~16:00
 講師:村田喜代子
 会場;Operation Table/QMAC 北九州市八幡東区東鉄町8-18  https://operation-table.com/index.html
 会費;1,000円 (トーク後お茶/wineの会続きます。参加の方は+500円)

ヒロシマ・ナガサキ、2つの原爆、そして八幡大空襲、終戦という、忘れてはならない日々が続く8月。原爆や戦禍の日々を題材にした「八幡炎々記」「新古事記」の著作がある村田喜代子さんをQMACセミナーにお迎えしてお話を伺います。膨大な歴史資料やルポルタージュ、社会批評の文献を参考に、自らの体験も含め数多の小説、エッセイを書き進めてこられた村田さん。この機会に創作の源泉や流儀をたっぷりとお聞きしたいとおもいます。

1945年 、 福 岡 県 北 九 州 市 生 ま れ 。1987 年 、「 鍋 の 中 」 で 第 97 回 芥 川 賞 を 受 賞。 1990年 、『白 い 山 』 で 女 流 文 学 賞 、1997 年 、『 蟹 女 』 で 紫 式 部 文 学 賞 、1998年 、「 望 潮 」 で 川 端 康 成 文 学 賞 、1999 年 、『 龍 秘 御 天 歌 』 で 芸 術 選 奨 文 部 大 臣 賞 、 2010 年 、『 故 郷 の わ が 家』 で 野 間 文 芸 賞 、 2014年 、『 ゆ う じ ょ こ う 』 で 読 売 文 学 賞 、 2019 年 、『 飛 族 』 で 谷 崎 潤 一 郎 賞 、 2021年 、『 姉 の 島 』 で 泉 鏡 花 文 学 賞 を 受 賞 し た 。ほ か に 、『 花 野 』 『 八 幡 炎 炎 記 』 『 屋 根 屋 』 『 村 田 喜 代 子 の 本 よ み 講 座 』 な ど の 著 書 が あ る 。(『新古事記』2023年講談社刊の巻末著者プロフィルより)

         
左から  著者ポートレート/『八幡炎々記』2014年平凡社刊/『ゆうじょこう』のフランス語版 "Fille de joie" 2017年ACTES SUD /
『新古事記』2023年講談社刊/『新古事記』 2026年 講談社文庫

村田喜代子「わたしの小説のこと話します。」大入り盛況のうちに終了しました。会場の熱狂や、事後SNS投稿でも、参加できなかったからの残念投稿も含め、反響は続きました。臨場感と村田さん講演内容がよく伝わるので3名の方に許可をいただきSNSから転載させていただきます。

     
(左の3点)セミナー・トーク中の村田喜代子さん  (右端)「新古事記」執筆のために村田さんが集めた参考資料
(左端)©️宮下緑 (左から2点目)©️坂元美由紀 (右の2点)©️安部和城

安部和城 熊本県世界遺産推進課学芸員

2026.08.15 PM 第54回QMACセミナー 村田喜代子「わたしの小説のこと話します。」を拝聴。
村田さんの最新作『新古事記』が生まれるまでのお話でした。
この本の原作となった『ロスアラモスからヒロシマへ』の翻訳者の捜索から、主人公の設定に至る『幕臣航海記』の話、村田さん自身の放射線治療の経験談、そして戦争に対する考えなど、こんな道程で『新古事記』が生まれたのか、と思いました。最後には仏教の「善悪不二」の話へ至ります。(仏教哲学ですね。)
また、トークの中で村田さん自身が、原作『ロスアラモスからヒロシマへ』の中で心に残っている言葉とシーンの説明がありました。
原爆実験の爆発を見るためにロスアラモスの科学者を含む住人達が高台へとゾロゾロ見物に向かっている時、主人公の女性とその夫であるロスアラモスの1人の科学者はこのように言ったそうです。
「僕達はそういうものが見えない所に行こう。」と。
村田さんは2時間ずっと立ったまま留まることなく話続けました。
普段自分や業界人が講演する時は、パワポや資料を作っていくわけですが、村田さんにはそんなもの必要なくて、「自分の言葉」だけで全てを担えるんです。まさに、「言葉を紡いできた人の力」を感じました。お話も冗談を交えながら進み、大変面白く、また大変勉強になりました。
ちなみにトークの中で拾った村田さんの格言の1つが「下手な本は読まない、伝染るから。」というのがちょっと面白かったです。
合わせて小原佐和子 × 山福朱実『 どこかにある風景 』も鑑賞しました。
こちらは北九州市の風景を切り取った小原佐知子さんの写真と、その写真を木版画にした山福朱美さんのコラボ作品の展示です。
北九州市に住んだことのある人であれば、必ずどこか分かる写真がいくつもあり、記憶を呼び覚まします。
特に戦争遺跡、産業遺産にフォーカスされています。
また、門司港に存在した日本銀行西部支店の唯一の痕跡である煉瓦塀が作品になっていたことに大変驚きました。それが山福さんとのコラボレーションによって、新たな作品になっていることにも感動しました。
版画作品そのものもとても魅力的でした。
作品がタンバリンになっているのもとてもユニークだと思いました。

【追記】
『新古事記』読了しました。
最後のページで記された比喩が印象的です。
「戦争のない空と地上は、大きなスープ皿の上澄みみたいに静かだった。」


坂元美由紀 うらんたん文庫主宰

「古本がないと一冊も書けません。よ~く調べないといけないんです。」
8月15日土曜日、北九州市八幡東区にあるオルタナティブスペース・Operation Tableで開催された第54回QMACセミナー・村田喜代子「わたしの小説のこと話します。」での、村田さんのひと言。
この日は先月7月15日に文庫化刊行された『新古事記』(村田喜代子著・講談社刊)の執筆過程を詳細にお話くだいました。参考資料の一部もお持ちいただいており、小説(フィクション)といえど実際の手記がベースでもあり、文中の個別の物語はそれぞれ実話に基づいて構成されているんだなあ。
文庫本を読了して参加、執筆に至る事情などはあとがきにも書かれていたけれど、どこまでが実話なのか??と気になりつつ読んだのでスッキリ。さらに、シリアスなテーマなのに、クスと笑ってしまう比喩表現が読み進める推進力🤣になるのですが、それについて参加者の村井さんがズバリ質問されててこれまたスッキリ😍
お名前こそ存じておりましたが、こんなに面白い物語を書かれる作家さんとは知らず、これまで芥川賞作品も含めて1冊も読んでいなかった~~。
ということで、セミナー後に直接お話する中で、福津市の画家のことも書いているよと伺い、早速日本の古本屋(古書ワルツ)で見つけたこの2冊。
連れ合いの実家の菩提寺・正連寺さんに多数の襖絵を残された甲斐大作さんが【発掘篇】に紹介されていました。

📚『偏愛ムラタ美術館』
著者:村田喜代子
装幀:毛利一枝
発行:平凡社
2009年11月18日初版第1刷発行
※本書は雑誌『一枚の繪』2007年9月号~2009年8月号に「気になる絵」と題して連載したものを再構成しました。

📚『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』
著者:村田喜代子
装幀:毛利一枝
発行:平凡社
※本書は雑誌『一枚の繪』2010年6月号~2012年11月号に「続・気になる絵」と題して連載したものから抜粋の上、再構成しました。
図版も多く掲載されたおり、しかも私の好きな作家が多数😍。貝原浩『風しもの村』も紹介されていました!!ムラタ節を楽しみながら画集もあらためて眺めてみたいと思います。
「下手な本はうつります…」
AIを使った文学賞応募が話題になっていますが、良書を選んで読むことの大切さを経験的につぶやかれたのだなあ。古本愛があふれるお話、とても楽しいひと時でした。


宮下緑 一生もんshop緑々店主

昨日のOperation Tableでの村田喜代子さんのお話し会、いやもうすごい時間でした!
@quetmata
このたび文庫化された『新古事記(an impossible story)』の完成に至るまでの情熱たるや。
がんを患い放射線治療をはじめたことをきっかけに3.11フクシマの放射能や量子物理学へと興味を広げ、『ロスアラモスからヒロシマへ』(フィリスK. フィッシャー 著 橘まみ翻訳)と出会い(ロスアラモスは原子爆弾の開発を目的にした研究所があった地)、それを小説化すると決意、それからそれから。。。
関係する人物を突き止め、徹底的に資料を調べ、膨大な量の情報を整理しまとめあげ『新古事記』完成まで。
息をもつかせぬ展開の2時間。何を考え、どう組み立てるのか、プロセス、その背景をたっぷり。あまりの情報量の多さに途中でメモを取り始めたけれど、追いつかないほど。
直接的に説明するでなく原爆のこと、ヒロシマのことを描くことができる(映画「関心領域」を思わせるような)、見たことも体験したこともないのに時空も距離も超え、まるでその場にいたかのように表現することができる小説ならではの世界。
村田さんの現実を捉える目
探求する意思
想像力の豊かさ
まとめあげる力量の見事さ
なんといっていいか
言葉が思いつかない
それ以上の能力をあわせもつ方としか
意外なタイトルの謎も、読めば納得である。
引用されているネイティブ・アメリカンの言葉、哲学も興味深く、いろいろ調べたくなる。
とにかく刺激的な時間。あれもこれもと頭も胸もいっぱいになってしまった。
帰り道、村田さんの作品を読みたくなり、いてもたってもいられなくなり、丁度割引セール中のブックオフに立ち寄って探すことに。
そこで、なんと『新古事記』の参考文献だった『中濱万次郎 「アメリカ」を初めて伝えた日本人』(中濱博著)を発見!
お値段も手ごろだったので購入!
ジョン万は今日の村田さんのお話しのメインとも言っていいほどの存在だったので、振り返りにぴったり。
恥ずかしながら村田さんの作品は文章講座に関する2冊を読んだだけで小説は初めてだった。
小説は好きなのになぜか…しかし出会えてよかった、ほんとに。
昨日ご一緒した サトさん @turubara_hon からも村田さんのおススメ本のご紹介が早速あり、しばらくは村田文学に浸ることになりそう。
わが夏休みは読んでばかり。
デジタルデトックスは読書に限る。





KitaQ BRUT 2026の展評を弱(チンピラ)虫さんに寄せていただきました。弱(チンピラ)虫は2024年12月にOperation Tableで開催した第39回QMACセミナー「力、あるいは力│空間」でインスタレーションとライブを行ったミュージシャン/アーティストです。

また会期中に行われた出品作家によるワークショップと歌の会、2つのイベントの写真を公開しています。
2026 5/4 mon. (G.W.) 14:00-16:00
イブ ワークショップ 「ビニールタイでにょきにょき盆栽」
2026 5/10 sun. 14:00-15:00
斎藤龍樹 歌の会 「懐かしい歌 いまどきの歌」


「野村由香 石炭のみる夢」の会場写真および関連イベントの動画をUPしました。また、展評をインディペンデントキュレーター、原田真紀さんによせていただきました。

4/25からKITAQ BRUT 2026 始まりました。

 

KitaQ BRUT 2026 ブリュっとくる新鮮さ
会期 2026 4/25 sat. ▶ 5/10 sun.
会場:Operation Table + mama福
Operation Table:金土日11:00~18:00 月~木は電話・メールで予約受付オープン
GW祝日もオープン (4/25初日のみ17:30閉場)
入場は無料
Tel;090-7384-8169 email; info@operation-table.com

mama福:店休日 5/7 thu., 5/8 fri. 営業時間など詳細はinstagramをご覧ください。

出品作家:網岡俊介、石江祐一、イブ、上野修路、斎藤龍樹、田中康弘、友近邦宏、中山綾、福田しずか、満生秀次、森崎育斗優太、YUKI

関連イベント
2026 5/4 mon. (G.W.)
イブ ワークショップ ビニールタイでつくる植物
14:00-16:00 参加費 1,000円 (お茶の会付き)
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2026 5/10 sun.
斎藤龍樹 歌の会 「懐かしい歌 いまどきの歌」
14:00-15:00 参加費 1,000円 (終了後パーティあり、+500円)
どちらも会場はOperation Table

Operation Tableでは2021年に北九州市内の障害者施設に所属したり、自宅にて制作活動を行っている13名の作家たちの作品を集めてKitaQ BRUTを開催しました。https://operation-table.com/kitaq.html
今回はその第2弾、活動休止中など4名が抜けあらたに4名NO作家が加わりました。ほかの9名の作品も5年の間にずいぶん変化しワクワクするような新たな展開が見られます。調査や借用訪問、展示設営には遠藤タラコさん、進藤まよみさん、花田智子さんに協力いただいています。
もう一つの会場、mama福にはイブさん、田中康弘さん2名の作品を展示させていただきました。
ゴールデンウイークをはさんで2週間あまりの開催ですが、イベントもありますので、皆さんぜひ会場をお訪ねください。


   
(左の2点)友近邦宏 天井吊下り9点は裏側から見ると下地にびっしりとマーカーでたくさんの線や形が描かれているのが見える。(3番目)壁面に貼られたカラフルなドットやモノクローム・ストロークの作品、友近邦宏 22点。(右端)石江祐一 「機関車」「軍師官兵衛」「ほうれん草」 水彩・紙
   
(左の2点)イブ〈草野貴世 蜜蝋室〉「魔女」「死神」「蜘蛛男」「レッドピラミッドシング」「マンゴースチンの蝙蝠」「蜘蛛」ビニールタイ
(右端と下の段の左端)メインギャラリー全貌
     
(中央の2点)イブ〈手術台の上〉「Operation Table」Operation Tableのシンポル、「手術台の上のミシンと蝙蝠傘の出会い」をイブがアレンジした作品。手術台の上でミシンが蝙蝠に変身。動物のお医者さんも患者さんを担架で手術台まで運んでいます。無影灯も見えます。「平和の戦車~アネモネたちのガザ」トイレがゆっくりできるのは平和だから⋯ガザ地区のニュースを見て平和を問いかけて生まれた作品です。ガザ地区は元々お花といちごの産地で大地には一面にアネモネが咲くそうです。 「ナガサキ」 ビニールタイ
(右端)中山綾 〈タイル壁タテに4点〉「黄色・赤・緑の線とかたち」」レインボーカラーのラブリ」「紫 やじるし」「赤 花をとる」〈タイル垂れ壁 ヨコに2点〉 「レインボーカラーのかたち」「青・水色・黒・黃・赤・茶・黄緑の線とかたち」  色鉛筆・紙

       
(左端)網岡俊介「20枚のミニ・カラーストローク」クレヨン・メモ用紙 「青緑・緑・黃」「ベージュ・黄緑・緑・クリーム色」「茶・緑」「赤・緑・黄土・濃い緑」アクリル・紙
(左から2番目)上2段:優太 「カニ」「「アメリカ合衆国/JAPAN」スーパー○◯」「けいしちょうホイールローダ」 5年前は動物や食べ物が多かった、今回は乗り物や建物が登場。中段:上野修路「緑・オレンジ」「黃色の線に青い丸」「赤・青・緑のドットと線」「青・緑・黄土色」」「赤・黄」 ビー玉・アクリル・紙 ビー玉に絵の具をつけて転がした線です。下2段:森崎育斗「モーツァルト トルコ行進曲」「ベートーベン」「カラフルな地図」「墓地」「カラフルな線の地図」「赤・黃・茶・水色の地図」「カラフルな凸型の地図」ボールペン・色鉛筆・カラーマーカー・紙 大好きな作曲家の音楽を楽譜で書きました。ほかの十字や凸型が詰まっているのは地図です。墓地の地図にはお墓が並んでいます。
(左から3番目)満生秀次 「満生くんと斎藤くん」「抽象」「ともだち」「ともだち」「こいのぼり」カラーマーカー・紙
(右から2番目)Yuki 「あの頃」アクリル・キャンバス 2025 「空中読書 小人編」アクリル・キャンバス 2024 「名物探偵は猫が好き」アクリル・キャンバス 2024 「夢は正夢」アクリル・キャンバスペーパー 2026 「オルゴールの旅」アクリル・キャンバス 2025 「仲間たちと泳ぐ日々」 ミクストメディア・紙 2022 「continue」アクリル・キャンバス 2026 (右端)イブ〈白い医療器具棚〉「Afternoon Tea」 ビニールタイ  ウサギと狼のアフタヌーンティのお話は、下から上へと続きます。下段;狼はウサギに話したい事があります。中段;胸の奥につまっていた思い、どんどん息をするように話します。上段;おいしいお茶とお菓子、話を聞いてくれる友達。あっという間に笑顔に。
     
(左端)福田しずか 「カンガルー」「モナ・リザ」「柳川」「オリンピック」 水彩・紙 (次の3点)田中康弘 〈左パネル〉「噴水の公園」色鉛筆・紙「ヴァレンタインデー」「夢の空中飛行」色鉛筆・クレヨン・インク・紙「並木道のウォーキング」「散歩」「C571 蒸気機関車」「窓から富士山」以上、水彩・紙 〈右パネル〉「ゴリラ」「森のフクロウ」「犬」「あげタイヤ」「眼鏡犬」「ビーグル」「ウサギとにんじん」色鉛筆・インク・紙 「犬」 色鉛筆・カラーマーカー・インク・紙 「カラフル・ドット・ウサギ」「カラフルドットネズミ」「カラフルドットイヌ」「座るひと」「万歳するひと」「步くひと」「鳥を見るひと」以上、色鉛筆・インク・紙
 
(左)イブ「ピンク・アルパカ」ビニールタイ (右)斎藤龍樹「ペットボトル」マーカー・カラーマーカー 「酒屋にて」「工場街」「芳醇無比」「モナ・リザ」以上、マーカー

【ワークショップの様子】

     
     
       

【歌の会の様子】

                     



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第48回までのQMACセミナーはevent.htmlに移動しました。

遠賀川神話の芸術祭2025 は過去の展覧会へ移動しました。

2月28日(土 )から始まる野村由香「石炭のみる夢」をご案内します。

 

野村由香 石炭のみる夢
会期:2026年2月28日(土)〜3月15日(日) 
金土日 11:00~18:00オープン 月〜木は前日までに予約
会場:Operation Table 北九州市八幡東区東鉄町8-18
https://operation-table.com/index.html
入場無料
助成:公益財団法人 松浦芸術文化財団、野村財団

会期中イベント
🟨 2/28(土)《野村由香トーク》+《山福朱実(唄・朗読)✕末森樹(ギター) 炭鉱歌ライブ》+ミモザ・パーティ 14:00~ 参加無料
🟨 3/1(日) 近藤由紀(トーキョーアーツアンドスペースTOKAS プログラム・ディレクター) トーク 《TOKASのアーティスト・イン・レジデンス活動、そしてTOKAS-Emerging 2025 "野村由香 光る山”について》 16:00~ 参加料 1,000円
🟨 3/15 (日) 《野村由香トーク》+クロージングパーティ 14:00~  参加無料

野村由香(のむらゆか 1994年生まれ。京都市在住)
山や海、大地を静かに物理的に変化させる根源的な力と、人との関係に関心を持ち、これまで大量の土や段ボール等を用い、時にパフォーマンスを含めた手法で立体やインスタレーションを制作してきた。 2023年にオペレーションテーブルで開催された展覧会「石炭と鉄/山本作兵衛×青木野枝」を観て石炭に強く惹かれ、石炭に関する制作を開始。各地の炭鉱跡をめぐり、石炭を運んでいた馬(対州馬)についての作品や、石炭そのものを描画材としたドローイングや立体作品などを制作し、2025年春にはトーキョーアーツアンドスペース本郷で個展「光る山」を開催した。 今回オペレーションテーブルでは、九州各地や北海道、宇部、広島など、これまでに取り組んだリサーチを基に、北九州での滞在を通して制作した新作による展覧会を開催する。


野村由香さん、昨年11-12月にOperation Tableも会場の一つだった「遠賀川神話の芸術祭2025」にも参加し北九州/福岡の皆様にはお馴染みになっています。それも京都在住ながら、近年、大分(マイクロアーティストインレジデンス別府;お湯のつかれ・別府 2024.12)、広島(アーティスト・イン・レジデンス プログラム 2025「あたらしい場所」/アートギャラリーミヤウチ 2025.4-7)、長崎(半井桃水館芸術祭シャンデリア/対馬 2025.10)と活躍の場が西日本に広がり、福岡から近い釜山の日韓グループ展 (Wish,Tag 漢城1918/韓国)にも参加しています。
もうひとつ、急遽、展示会場追加が決まった「石炭のみる夢 bis@mama福」をご案内します。
mama福  https://www.mamafuku.jp
805-0048 北九州市八幡東区大蔵2-11-14 TEL;093-616-0606
西鉄バス JR八幡駅入口/小倉駅入口から①番大蔵下車、Operation Tableまで(から)徒歩15分、JRスペースワールド駅から徒歩26分(お車の方は新神田市場隣、大蔵商連お客様駐車場をご利用ください。)
会期はOperation Tableと同じく2026.2.28(土)~3.15(日)ですが、月•火 11:00~17:00、金~土 11:00~22:00、水•木休みと、オープン日時が異なります。どうぞ両会場お訪ねください。

野村由香の作品およびプロフィールetc.はこちら https://www.yukanomura.net



   

 
写真およびヴィデオ撮影は©️黒田ダイスケ

経路の黄花
原田真紀

馬も一度は涙を流す あまり叩くな馬丁さん
山本作兵衛 炭坑画〈坑内馬〉より

野村由香と石炭との出会いは2023年、北九州市八幡のギャラリーOperation Tableに遡る。開催されていた「石炭と鉄/山本作兵衛×青木野枝」展で初見し、ぬめるような艶やかさ、温もりのある生き物のような石炭の存在感に魅了された。その後、旧産炭地である夕張や筑豊、三池、宇部を訪れ、石炭を巡る人々の痕跡やその土地に眠る時間の堆積のリサーチが始まる。これまで、土地固有の土や水、植物、廃品などを素材に、目に見えない根源的なエネルギーを、自らの身体を通して探る大規模なインスタレーションやパフォーマンスを展開してきた野村にとって、エネルギーそのものである石炭は新たな表現の契機を誘うこととなる。
石炭にまつわる作品は、翌24年に対馬で開催された「半井桃水館芸術祭シャンデリア」で初めて発表された。リサーチの過程で、野村はかつて対馬の人々の生活に欠かせなかった「対州馬」の存在を知る。農耕や運搬の主要動力として、丈夫で温厚な対州馬は土地の人々との暮らしとともにある一方、全く異なる宿命を背負っていた。扱いやすさに加え、小型のわりに脚力のあるこの馬は、日本近代化の礎となった炭坑とも切り離せない。
狭い坑内で石炭を積んだトロッコを引く、地上で石炭を運搬するなど明治から昭和初期にかけ、炭坑においても対州馬は不可欠だった。幼い頃から坑内へ下った筑豊の炭坑絵師、山本作兵衛(1892-1984)も度々その姿描いている。〈明治中期より坑内馬 昔の中小ヤマは排水困難のためあまり深い坑内はなかったが横に広く掘進するので片盤(水平坑道)が遠くなる。二百メートル以上になると馬を使う。浅いヤマは毎日日没頃にあげるが、深いところは一週間位あげぬ。久し振りに上がった馬は娑婆の風に吹かれ欣喜跳躍する。〉〈坑内馬は背の低い強力なものを使うが、水を多く吞ませるから腹ばかり膨れておる。これは明治だけでなく昭和の初期にも入坑させておるヤマもあった〉〈坑内用炭函を五台くらい曳いていた。三屯または二屯半〉と、画中の言葉から当時の筑豊炭坑の様相が伺える。三池炭坑はさらに過酷を極め、暗く高湿度の坑内に厩舎が置かれ、一度地下へと下った馬は二度と日を浴びることなく、酷使され短命で終わったという。野村は対馬のレジデンスにおいて、家屋の解体で出た木材や和紙で対州馬を制作し、藁や芒を纏わせ足元に車輪をつけ可動式にした。陽光差すのどかな集落を自ら引いて回り、馬の目線の位置から撮影した映像とあわせて「芒」(2024)を発表した。
2025年からは石炭が素材として作品に盛り込まれていく。アートギャラリーミヤウチ(広島)でのアーティスト・イン・レジデンス2025「新しい場所」では、石炭の粉と接着剤で作った絵具でドローイングを描き、それを組み立てた石炭船を、TOKAS-Emerging2025(東京)での個展「光る石」では炭坑労働者の俳句などを手がかりにして、石炭で描いたドローイングを造形し、今度は坑道を象った。まるで石炭産業が内包する闇の重力を物質化するような作品の傍らにも、芒を纏った対州馬が佇む。
 およそ3年後、野村は再びOperation Tableへと戻り、同所で念願の個展を開催した。ギャラリーの扉を開けた途端、新鮮な青葉の薫りに包まれる。続いて手前の小部屋からメイン会場にかけて、広島で制作発表された「石炭船」(2025)がミモザを載せて姿を現す。それは、「移動」を彷彿させるとともに、点と点をつなぐモチーフでもあろう。リサーチを重ね、対馬、広島、東京と場所を変えながら石炭へ挑んだ野村の歩みであり、石炭産業と製鉄業を支えた動力源である馬と船と蒸気機関車の変遷であり、さらには炭坑の隆盛に左右された人々の往来や越境をも示唆する。
本展「石炭の見る夢」に現れた「炭鉱の馬(アカシア)」(2026)は、全身をミモザの花と葉で豊かに肉付けされており、対馬で制作した馬の一部が使用されている。ギャラリーの薄いブルーグレーの壁が黄色を一層際立たせ、馬は生命力に満ちる。ギャラリーオーナーが以前遠賀郡水巻町に住んでいた時、炭坑跡地にミモザが群生していた記憶があり、そのエピソードに着想を得たという。偶然にも、ギャラリーの植え込みに立派なミモザの木が茂っており、ふんだんに使用していた。新作ドローイング「ミモザになった馬Ⅰ」「ミモザになった馬Ⅱ」(2026)はミモザの木の根と対州馬の4本の足が繋がったり、馬の後ろ足とミモザの木が一体化したりして興味深い。炭坑跡地に咲いたミモザは、その地下深くに眠る声なき声や犠牲となった命の表象であるのかもしれない。
今回の展示で印象に残った「黄色い花の咲くところ」(2026)は、石炭で描かれたドローイングだ。パノラマの構図に海峡を見渡す景色が描かれる。海峡は物も人も文化も交差する場所だ。目を凝らせば両岸にボタ山や荷を引く馬、移動する人々の姿が。海へ注ぐ川は石炭や馬を乗せた船が行き交い、その先には対馬や朝鮮半島もうっすらと姿を現し、石炭をめぐる野村の足跡を集約した作品ともいえる。この黒一色の世界に小粒なミモザの花が星のように散りばめられ、かすかな光を灯す。日本近代化や資本主義、富国強兵と共にあった石炭産業は、力の原理が支配する世界だ。本展において野村は「移動」を手がかりに、産業構造やエネルギーをめぐる人類の欲望を俯瞰し、周縁化され、生を翻弄された動物や人間、植物からその様相をまなざした。同時に、いまなお連綿と続く人間中心主義への問いかけが、横断的な視野の広がりを誘う。あの時見たミモザの馬に心なしか穏やかな印象を受けたのは、Operation Tableが元動物病院だったから?と振り返っている。

(インディペンデント・キュレーター)

参考資料
〇『野村由香 作品集』2025年(野村由香発行)
〇『TOKAS-Emerging 2025 野村由香「光る山」』2025年(公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペース発行)
〇『開館5周年記念 山本作兵衛展』図録1996年(田川市美術館発行)
*本稿執筆に際し、野村由香さんにオンラインインタビューを行った(2026.4.16)





第48回QMACセミナー「山本聖子『 鉄と美術ー鉄都が紡いだ美の軌跡」(北九州市立美術館)』に参加して」に臨んだ花田伸一さんから自身の体験にも照らしたエッセイを寄せていただきました。

「第49回QMACセミナー「田中奈津子 TALK ONLINEスタジオ内/外を往来する〜寛容の地インドネシア」の会場写真および セミナーでオンライントークをしていただいたインドネシアのキュレーター、リズキ・アサシさんのプレゼンテーション資料(PDF)を掲載しました。











ちょうど開催から1年経ちましたが、このたび2024年2月23日~3月23に開催していました「アキレスと亀と旅ねずみ」の展評を吉川神津夫さんに寄せていただきました。(リンクはこちら) 展覧会直後に花田伸一さんからのエッセイもすでに掲載済みなのですが、展覧会終盤に京都からおいでになった吉川さんが展覧会をご覧になって、展覧会の典拠のひとつでもある寺山修司の「レミング」を初演でご覧になったことなどをお聴きし、別の視点で展覧会評を書いていただけるのでは、とお願いしていたものです。この機会に5期に分けて展示替えが実現された展覧会の展示模様をスライドショウにしてまとめ5つの動画を掲載しました。(リンクはこちら)

QMACセミナーのご案内
また3月には、ただいま北九州市立美術館で開催中の「磯崎新の原点 九州における1960-70年代の仕事」を企画された学芸員の落合朋子さんに、展覧会準備から開催までの経緯や展示内容についてお話を伺います。

11月9日から24日まで開催していました「遠賀川神話の芸術祭」にライターの黒川智子さんから展評を寄せていただきました。

村田峰紀のパフォーマンス映像と画像を掲載しました。

8月〜9月に開催していました「「NAGAB 長崎からのアール・ブリュット」、うらんたん文庫の藤田学さんから展評を寄せていただきました。

QMAC企画からの第三弾となる黒岩恭介著『フランク・ステラ さまざまな視点から』を発行しました。 ここをクリック

終了して1年余りが過ぎた展覧会ですが、昨年6月23日から8月27日まで開催していた「林檎と蜜柑の数え方」の展評に替えて、東アジア現代美術研究者の藤田千彩さんによる三津木晶さんへのインタビュー記録を公開しています。
なお藤田千彩のインタビューは22,000字に及ぶ長いものでしたので、ホームページ掲載用には短縮版を、フル・ヴァージョンはリンクを張ってお読みいただけるようにしています。

このたびQMAC企画から『高松次郎インタビュー記録集』を刊行しました。 黒岩恭介「フランク・ステラ、思い出すことなど」を掲載しました。

「アキレスと亀と旅ねずみ」展の展評を佐賀大学の花田伸一さんに寄せてもらいました。




遠賀川神話の芸術祭2024 は過去の展覧会へ移動しました。



昨年、QMAC企画から刊行された『アーサー・ダントを読む』に続き、QMAC企画第2弾となった黒岩恭介著『コンセプチュアル・アートの三人』を発行しました。

2023年11月29日で終了した「やはたアートフォレスト 2023~パレットの樹~関連企画 遠賀川神話の芸術祭2023~石炭と鉄/山本作兵衛✕青木野枝」展のために、上野朱さんから作兵衛翁を詠った「作兵衛升歌」「栓友-作兵衛・タツノの場合」の2篇とその解説、また落合朋子さん(北九州市立美術館学芸員)から展評を、そして青木野枝さんから、急遽開催が決まった展覧会への思いを綴ったエッセイを寄せていただきました。

桑山忠明(1932-2023)さんの訃報が届きましたので、お知らせします。8月13日(金)にニューヨークで家族に看取られながらお亡くなりになりました。後日偲ぶ会を計画しているそうです。ご冥福をお祈りします。

桑山忠明追悼展のお知らせ
会場:Marlborough Galley, 545 West 25th Street, New York, NY10001
会期:2023年11月9日 ー 2024年1月12日
初日は午後5時にオープン

8月27日終了の「林檎と蜜柑の数え方」の会場写真と出品作家2名+真武の各エッセイを掲載しました。
33rd QMACセミナー「寺山修司と高松次郎の68/72」真武真喜子(インデペンデント・キュレーター/Operation Table)をご案内します。

2019年の第30回以来、コロナ禍のため中断していましたQMACセミナーを再開いたします。
第31回目となる再開第1弾は、QMACセミナー第0回から17回までに4回ほど「アーサー・ダントを読む」という連続講義をしていただいた黒岩恭介さんにお願いしました。
これに続いて次週は、関西を拠点にアートライターとして活動する藤田千彩さんにおいでいただきます。詳細はこちらをクリック。





※終了した展覧会については、トップ・メニューの【exhibition/・past】にまとめています。
※終了したセミナーについては、トップ・メニューの【event】にまとめています。




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写真家、山本糾さんの「ミシンと蝙蝠傘」です。「ミシンと蝙蝠傘」は2017年Operation Tableで開催された山本糾さんの展覧会タイトルであり、その中心となった出品作でした。印画紙にプリントされたモノクロ写真を屋外に設置する方法をずっと検討して2年が経ったのですが、このたび彫刻家、古賀義浩さんの製作したガラスフレームに入り、設置も古賀さんにやっていただきました。カラフルな素材や筆跡も残る壁画の中に、モノクロームの硬質な写真作品が加わり、外壁ギャラリーも一層バラエティに富んだものになりました。みなさま、通りすがりに、また展覧会やイベントにおいでの機会に、ぜひご覧ください。

 
山本糾「ミシンと蝙蝠傘」(右図)が仲間入りしたOperation Table外壁右中段














2018年11月23日、Operation Table外壁に新しい作品が加わりました。古賀義浩さんの石板レリーフです。いつもは水平線や山の稜線を思わせる抽象的な1本の線が走っている古賀さんの石板レリーフ、ここでは他の壁作品と同じく、手術台+蝙蝠傘+ミシンをテーマにしているので、手術台から浮き上がったミシンから青い糸の刺繍が縫いだされているような蝙蝠傘をかたどった線、曲線をつなぐために、きちんと並んでいる石板も不連続多方向につながっています。お近くまでいらっしゃる方はぜひお立ち寄りご覧になってください。



11月23日(金)に壁の作品がひとつ新たに設置されます。古賀義浩さんの石板レリーフです。ただ今絶賛制作中なので、まだどんなものになるのか???ですけど、乞うご期待。すでにある壁の作品たちと同じく、手術台とミシン+蝙蝠傘がテーマです。古賀さんが以前から制作発表してきた石板レリーフのタイプの作品となります。公開設置と記念トークをご案内します。
2018年11月23日(金・祝)
13:00 公開設置
14:00 記念トーク 古賀義浩
16:00 レセプション
場所 Operation Table
参加費 500円(レセプションは+1,000円)

     
古賀義浩さんは2016年に開催された「行雲流水 青木野枝+古賀義浩」@Operation Tableの展覧会アーティストです。 http://operation-table.com/koun.html